世界唯一の「月経博物館」が台湾にできた理由 創設者であり、台湾の若きリーダーの1人ヴィヴィ・リン氏

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そこで皆さんを座談会に招待しました。また、座談会を通して知り合った母子3代に、自分の「月経」の経験について聞き取りをして本にもまとめました。

本のほかドキュメンタリーも制作して台湾各地で上映したのですが、たくさんのおばあちゃんたちが次々と観にやってきて言うんです。「なんだ、(生理のことを)言ってはいけないなんてことなかったのね」「今度は孫を連れて観に来るわ!」って。

――タブーだった訳ではなかったのですね。

そうです。一度、90歳ぐらいの男性が何かの報道で私たちを知り、わざわざタクシーでやってきて言いました。「何十年も前から私も同じように思ってたんだ、意識を変えるべきだって!」って。最近は、イベントのたびに地元の方が子供や孫を連れて観に来てくれるようになりました。

――(台北市の)西門町や信義区といった若者の多い場所ではなく、ここに作ろうと思った理由は何でしょうか。

この通りは伝統市場(朝や夕方に立つ食材の販売を主とした市場)のある極めて「日常」的な通りです。車に乗って遠くまでわざわざ観に行くとか高い入場料を払って入るのではなく、市場で食材を買うぐらい月経博物館が日常的な存在であってほしい、生理の話題が当たり前になってほしいという願いを込めました。

すべての生理用品を紹介

――この大同区にはほかにも「アマーの家」「文萌楼」など女性の人権に関連した施設が多いのは偶然ですか。(アマーの家:台湾籍「慰安婦」に関する記録を中心に女性の人権と平和をテーマにした記念館/文萌楼:元は公娼館で台湾のセックスワーカー運動を記念する歴史建築施設)

たまたまですね。ただ、この大同区には台北で一番早く発展した大稲埕を擁し、文化の土壌が豊かな場所だと思います。

おばあちゃんたちに月経の経験について取材する小紅帽(写真・小紅帽)

――オープン当時に初めて来たときは、あなたも含め小紅帽のメンバーが自分の性器を描いた展覧会をしていました。

展覧会は、シーズンごとにテーマが変わります。最初は女性器の様子、今は「月経と精神の健康」です。また、台湾内外の若いアーティストに発表の場を提供したいとも思っています。今回はカナダとスコットランドにミックス・ルーツを持つアーティストが展示に参加しています。

――私が16年前に台湾に来て驚いたのは、スーパーに行っても生理用品の種類がとても少ないことでした。しかし近年は月経カップなども広まってきました。

現在でも台湾の98パーセントの女性は使い捨てナプキンのみを使用しています。でも私たちが学校で教えるときは、いま存在するすべての生理用品を紹介します。

使いたいとか使いたくないというレベルではなく、オプションを知らず、使い方もわからないから使わないだけです。重要なのは選択肢を知ることです。学校の先生だって使い方を知らないと、使い方を教えることもできません。

――最近は月経パンツが話題ですが、使い勝手はどうですか。

最近、ユニクロが発売して多くの人が手に取っていますが、私たちは特定の1つのアイテムだけを推薦はしません。使用感のよしあしは個人でまったく違いますし、使用者が生活する環境にも左右されます。だからたいていは皆一つのアイテムだけでなく、併用することが多いと思います。(※繰り返し使用できる月経カップや布ナプキンは、清潔な水を使える環境が必要)

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