「どこに勤めるか」でなく、「何をしたいか」 東大で博士課程に進んだが進路に迷い

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アカデミックな世界から、いわゆるビジネス方面に進みたい、ということですね。十文字さんのようにPh .D.へ進んだものの、違う分野に活路を見いだそうとする方は、決して少なくない昨今ですね。

質問の中で、「修士号はコストパフォーマンスがいい」と書かれていますが、いくらなんでも単に学費がそれなりに安いから、という意味ではないと思います(というかそう信じます)。本来、「コストパフォーマンスがいい」というのは、かけたコストの割に満足感などを含む相対的なリターンの高さを感じられる、という場面で使われるかと思いますので、ちょっと違和感がありました。

学歴や世間体にとらわれすぎるのはよくない

そしてビジネス界に挑戦したいということで、2つ理由を書かれていますが、これらは確かに、現在、十文字さんが感じていることなのでしょう。ですから、それらの理由について私がとかく言う立場にはありません。あえて言うとすれば「過度に学歴にとらわれず、適度な幅を持って挑戦をすべし」ということでしょうか。

十文字さんの今後、行いたいことが、「就職に悩む若者の手伝いをしたい」「難病に効果のある新薬を開発したい」など、明確なものではなく、どちらかというと漠然としているため、望みを満たせるか否かは究極的には「心の持ちよう」だと思うからです。

働いているかなり多くの人が、十文字さんと同じようなことを少なからず考え仕事をしています。また、新卒や第2新卒の志望理由としてもよく上がるフレーズでもあります。「自分は何をしたいか」は、他人がとやかく言うものではなく、自分が本当に信じた仕事で、なおかつ好きであれば長続きします。世間体がよいとか給与が高い、といった表面的な理由で選んだ仕事は、決して長続きはしません。

たとえば、同じ接客業であったとしても、その仕事を自分で「いい商品やサービスを紹介、提供することで買った人のその日やその後の気持ちを豊かにする手伝いをしている」と定義するのか、「とにかく売ればそれでいい仕事」ととらえるのかによって、本人のやる気も仕事へのスタンスも、当然、変わってくるでしょう。

ですから、社会人としての仕事の経験がない十文字さんのケースでは、たとえば「人々の生活に影響を与える」の定義を、先入観を含めたイメージで狭くしすぎると、みすみす目の前にあるチャンスを逃してしまうのでご注意ください。

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