「子どもの声を嫌う人」と折り合う道はあるか 都が「子どもの声」を騒音数値規制から除外

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このように東京都の条例改正は当事者のコミュニケーションを図ることで問題の解決を目指すものだが、実際にはそれでは終結しえない「子どもの声」を巡るトラブルも存在する。

昨年9月、神戸市東灘区の保育園の「子どもの声」をめぐって近隣に住む男性が保育園を経営する福祉法人を相手取り、より強固な防音設備の設置と100万円の慰謝料を求める裁判を起こした。

原告の男性側は「子どもの声」を測定し、その騒音レベルは70デシベルを超えているという事実を裁判所に提出している。これは街頭の喧騒や掃除機の音に相当するもので、静かな生活環境とはいいがたいというのが男性側の言い分だ。

一方で保育園側が園児たちの帰宅後に周辺を測定したところ、騒音レベルはすでに60デシベルほどあったという。保育園付近には阪神高速道路や国道43号線が通っており、交通量が多い。騒音は「子どもの声」だけではないというのが保育園側の主張だ。今後は専門家に「子どもの声」とその他の騒音を分けてもらい、果たして「子どもの声」が一般の受忍限度を超えるかどうかを裁判所が判断することになる。

この争いは保育園の建設計画が持ち上がった当初から発生しているもので、保育園側もカーテンや窓を閉めるなど騒音対策を行っていたが、原告側と折り合いがつかなかったという事例だ。ここまでこじれる前に、当該保育園に通う園児のためにもなんとか解決方法がなかったものかと思われる。

責任は子どもではなく、親にある

「子どもの声」について、タレントの松本人志氏が2月23日にtwitterで興味深いことをつぶやいた。1万1388人が公式リツイートし、1万6558人がお気に入りに入れている(3月29日午後2時半現在)。

「新幹線で子供がうるさい。。。子供に罪はなし。親のおろおろ感なしに罪あり。。。」

保護者側が周辺に気遣いを見せてこそ、受け手側も子どもに対して寛容になれるということだ。いずれにしろ、元気な子どもの声が騒音と見なされない社会の形成が急務だろう。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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