日本人が「今の仕事で幸せを感じる」のに必要な事 大きな変化を求める人が見逃しているポイント

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――今回は本を書いている間にパンデミックがあり、「破壊的変化にどう対応するか」といった部分を追加したと聞いています。今でも変化に戸惑っている人は多いと思いますが、そんな人たちに伝えたいことはありますか。

エヴァンス:私たちはいま「旧世界」と「新世界」の間にある世界にいるので、人々は不安を感じています。新しい世界はまだ到来していないうえ、私たちはみんな古い世界に戻りたいと思っているのです。こうした中であなたが不安を感じているのなら「大丈夫だ」と伝えたい。今は不安定な時期なので、不安を感じるのは当たり前なのです。

しかし、変化は受け入れなければいけないし、受け入れたら後戻りはできない。そこで重要なのは好奇心を持つことです。好奇心を持って未来へ向かうのです。前を向いて好奇心に身を任せれば、不安は解消されていきます。

好奇心を持って未来に身を投じてほしい

バーネット:デイヴが言ったように、嵐が起きているときにボートが揺れるのは、まったく普通のことです。それが楽しいこともあれば、本当に怖いこともある。こういう状況は日本のような精神疾患や心理的な不安についてオープンに語らない国にはチャレンジングですが、不安を感じるときは「あなたも不安なの?」と他の人に声をかけていいのです。なぜなら多くの人が1人で不安な思いを抱えているからです。実際、ワークショップでも多くの人が「行き詰まっているのは自分だけだと思った」と言う声は少なくありません。

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不安を抱えている人は他にもたくさんいますし、手を伸ばしてほかに誰かいないか探すのはそんなに大変なことではない。この本で伝えたかったのは「1人にならないでほしい」ということです。

デザイナーは1人で仕事をすることはないのですが、それと同じようにあなたも友人を3人か4人集めて気になることをリストアップするのはどうでしょうか。もちろん仕事に関することでなくてもいい。人とつながることができれば、「不安なのは当たり前だ」と認めることができる。そして、デイヴが言うように好奇心を持って未来に身を投じてほしいと思います。

エヴァンス:私たちは講座や本を通してみなさんが「Worry to wonder(心配することから好奇心を持つことへのシフト)」の手助けをしたいと思っています。

日本には「メンツを保つ」という文化があると思いますが、これは今起こっていることを把握できるからこそ、相手の期待に応えられるという側面があると思います。しかし、今はそういう状況にないので、そこにこだわるのではなく、むしろ一緒に悩んでいきましょう。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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