ソニー・ホンダ新EV「世界と戦える」と期待できる訳 プレゼンから見えてきたモビリティー戦略

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ソフトウェア主導の乗用車という観点でいうと、Autonomy(自律性)よりも重要なことはAugmentation(拡張性)という言葉にあります。ソニーの公式字幕ではAugmentationを拡張性と訳していましたが、この言葉の本来の意味はそれに加えて増加、増大を意味します。

実は旧来の自動車メーカーの最大の弱点がこのAugmentation(拡張性)です。旧来設計の自動車は機械製品であり、その機械を動かすために補助的にエレクトロニクス部品が使われています。

さらに機械部品の設計は1次、2次といったサプライヤー(部品メーカー)に分業されていて、結果として日本のガソリン車にはECUが20以上も分散して搭載されているという現実があります。

その結果として何が起きるかというと、旧来型の自動車は全体をコントロールするソフトウェアをアップデートできないのです。

古いハードウェアでもソフトウェアで性能が増大する

テスラ車が次世代自動車市場でユーザーから圧倒的に支持を得ている最大のポイントがここです。

テスラ車にはECUが3つしか搭載されておらず、かつその設計は当初から垂直統合で行われているために乗用車全体のコントロールは自社だけで完結します。そしてECUに最新のソフトウェアをダウンロードすることで、テスラ車はつねに最新のソフトウェア上で動くように設計されています。

つい最近もテスラ車で自動運転のソフトウェアがアップデートされたのですが、あるテスラユーザーが、レーザー光を使って物体を検知する自動運転センサー「LiDAR(ライダー)」もレーダーも搭載されていない8カメラだけの古いタイプのテスラ車に最新のソフトウェアをダウンロードしたところ、まずまずの自動運転が実現できたという動画を公開して話題になりました。

このように古いハードウェアで設計されたEVでもソフトウェアを増強すれば性能が増大するというのがこれからの未来車のコンセプトです。ソニー・ホンダもそのことは十分承知のうえで製品開発をされているという点で、ようやく世界と戦える日本のEVが登場しそうだという期待感を高めてくれました。

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