「VAIOフォンと初代iMac、戦略は同じだ」 日本通信の三田聖二社長に聞く

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アップルはブランディングの会社だ。通信業界でもiPhoneはブランド力だけでユーザーから10万円近くとっている。そうでしょ?何か差別化できているの?

福田(尚久副社長。かつてアップル本社で副社長を務めた)に聞いたけど、初代iMacも中身はベーシックな安いコンピュータだった。よりとがった、ニッチな製品を求める声も多い中で、カラフルな筐体にしてブランドを幅広いユーザーに広げていった。当初は「アップルにこんな製品を求めてない」などと酷評されたが、結局は機能ではなく、ポジショニングで大成功したわけだ。iPodも値段を高く設定して、洗練されたデザインで、ブランド戦略によってヒットした製品だ。

今回は、パソコンのVAIOのブランドを通信業界に紹介したということ。5万1000円の価格も、ブランドとして決して恥ずかしい価格ではない。まともな価格だと思っている。

まずは販路の開拓を優先する

「流通各社のバイヤーの反応はよい」という(撮影:梅谷秀司)

――製品をどのように拡販していくのか。

ここ数か月は主に販路の開拓を優先する。取引のあるヨドバシカメラやイオン、Amazonに加えて、そのほかの量販店も開拓していく。すでに引き合いもあるけれど、ほかのMVNOに販売してもいいと思っている。海外向けの販売もあるかもしれない。どの形でどのチャネルでやれれば売れるのか、しっかり検討していく。

もちろん、自信はある。理由は流通各社のバイヤーの反応が良いからだ。彼らは幅広い製品を取り扱っているので「これは売れる」という商品を見極める力がある。色々言われているが、一般のユーザーは、ニッチで高機能な製品を求めているわけではない。実際、今は予想以上のオーダー(5カ月で売上高40億円の見込み)を頂いていて、出荷が追いつかないほどだ。品質に影響がでないよう、フル稼働で作業している。足元ではSIMカードの出荷も増えている。

――差別化の核になるサービスについては、ほとんど説明していない。取り組みの評価が低く、株価が下がったのはその影響もあるのではないか。

発表会では基本のスペック以外、端末の特徴をあえて説明しなかった。ブランドで戦うことと、機能面で戦うことはどちらかひとつしかできない。両方をやると、どちらが評価されたのか、効果がわからなくなるからだ。サービスについては、10万台程度の規模になったときに加えていこうと考えている。

株価については、まあ…いいじゃない。1月の決算説明会で箱だけ見せたときには上がったのにね。ただ、市場が誤解して下げたならば、それは僕たちの責任でもある。もう少し意識する必要があったかもしれない。

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