日本上陸!「有機ELテレビ」の可能性とは? LGが大型テレビ向けパネルの量産に挑戦

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ディスプレイパネル生産子会社であるLGディスプレイは昨年秋、テレビ用OLEDパネルのラインを新設し、生産能力を4倍にすると発表していた。その後、中国メーカーへのOEM供給を発表し、日本の電機メーカーへの供給も視野に入れると追加でアナウンスしている。おそらく来年、日本のテレビメーカー(おそらくソニーかパナソニック、あるいはその両方)からもOLEDテレビが発売される可能性がある。

LGディスプレイのOLEDパネル生産能力は55インチ換算で毎月約12万枚。良品の収率がどの程度なのか明らかではないが、生産規模拡大は歩留まり向上の目処が立ったことを意味しており、生産拡大とともに、さらにノウハウ収集が加速すると考えられる。

まだ市場規模はきわめて小さい

年間の生産枚数は55インチ換算で144万枚となるが、昨年のOLEDテレビ出荷台数は、ディスプレイサーチの調査によるとわずか10万台程度。目論見通りに量産が順調に進み、日中各電機メーカーへの供給を進めることができれば、唯一のOLEDパネル量産メーカーとして前へと抜け出ることができるだろう。

このLGディスプレイの取り組みが成功すれば、台湾、中国のパネルメーカーも、OLEDの生産に本腰で投資を行い、量産ライン建設を目指すようになるはずだ。開発休止中のサムスンも、より歩留まりの高いLGに近い方式へ見直し、再びOLEDパネル量産に取り組む可能性もある。

LGとしては、中・大型の液晶パネルの中国での生産が増強され、採算性が悪化してきている中、少しでも高付加価値のディスプレイ方式にシフトをしたいからこその賭けなのだろう。ここに、放送、ネット配信、ブルーレイのいずれでも導入が進んでいるHDRという映像トレンドが加わることで、来年以降にもテレビ用OLEDパネルの生産立ち上げが急加速する可能性がある。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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