冷凍母乳が売れる!期待と不安の製品開発 低体重児の栄養補給や腸疾患に効果あり?

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ただし、メドラックCEOのエレナ・メドによると、現在のところ「複合糖質を抽出できるだけの量の母乳が集まっていない」という。

また、メドラックは女性を利用しているとの批判にさらされている。昨年、同社がクリントン財団と協働し、デトロイト(黒人が多く住む都市)の女性から母乳を買いたいと発表すると、黒人女性の犠牲の下に利益を得ていると責められたのだ。

黒人女性授乳協会は今年1月に、「女性たちが自分の子どもに与えるはずの母乳を、強制的に転用させられることを深く懸念している」と公開書簡で訴えた。これに対してメドラックは、授乳を金銭的に魅力のあるものとすることにより、授乳を促進することが狙いだったと述べたが計画は取りやめた。

寄付するか売るか、母乳争奪戦も?

母乳に対する金銭の支払いを擁護する人々は、企業が利益を得ようとするならば、その原材料を供給する側におカネを支払うことはまったく公正で、特に搾乳には大変な時間と労力が必要なので、なおさらだと言う。さらに、母乳の商業化が進めば、母乳の供給量も増えるのではないかと彼らは言う。

米国小児科学会は、「母乳には優れた利点があるため、低体重児は全員が母乳を与えられるべきだ」と言う。「その際には母親から与えられるのが望ましいが、それができない場合はドナーから与えられるべきだ」とも述べる。しかし、専門家によると、母乳を寄付したり売ったりできることを多くの女性が知らないため、現状では十分な量の母乳が集まっていないという。

保管用冷凍庫の前に立つ、プロラクタ・バイオサイエンスCEOのスコット・A・エルスター(写真:Monica Almeida/The New York Times)

プロラクタ・バイオサイエンスCEOのエルスターによると、昨年、同社は約68トンの母乳を加工したが、今年はその量を96トンに増やしたいという。これに対して、北米母乳バンク協会に所属する18の非営利母乳バンクが昨年取り扱った母乳は約99トンだ。これらの母乳バンクは、母乳を提供するドナーにはおカネを払わないが、ドナーのスクリーニングと母乳の低温殺菌の費用として、1オンス(約28グラム)あたり数ドルを病院に請求する。

なかには、母乳を必要とするほかの母親に、殺菌されていない母乳を直接提供する人もいる。その際に使われているのが「イーツ・オン・フィーツ」などの母乳提供ウェブサイトだ。また、「オンリー・ザ・ブリースト」などのサイトを通じて、母乳をほかの母親に(あるいは、母乳で筋肉を増やせると信じている男性ボディビルターに)売る人もいる。プロラクタやメドラックは母乳の提供者に1オンスあたり1ドルを払うが、それ以上を手にすることを願って、女性たちはここで母乳を売る。

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