昭和生まれのための「紅白歌合戦」10倍楽しむ見方 今年の「紅白歌合戦」は"近年最高"かもしれない

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また、幅広い世代に支持されているのが、紅白3回目の出場となる「あいみょん」。広い音域で驚かせるでもなく、刺激的な歌詞を口早に歌うわけでもない。ゆったり、音に体温を感じる楽曲はものすごく理想的にオーソドックスで、部屋の片隅でフォークギターを抱え、爪弾いていた、昭和の音楽小僧たちをも納得させている

今年7月21日に放送された特別番組『LOVE LOVE あいしてる 最終回・吉田拓郎卒業SP』(フジテレビ系)のゲストとして登場し、吉田拓郎との相思相愛ぶりも微笑ましかった彼女。生きる時代が違っても、誰でも共感できる、青春の息吹と実力を持った語り部のような佇まいがある。今年は「君はロックを聴かない」が聴けるようである。ビールが進みそう!

泣き声のようなシャウトが心地いい「Saucy dog」

「継承する」という意味では、「なにわ男子」も興味深い。デビュー曲『初心LOVE(うぶらぶ)』をはじめとした、キャンディーの如く甘いラブソングは、初期の田原俊彦楽曲を思わせるジャニーズ王道中の王道だ。今年初登場、しかも「Kinki Kids」と「関ジャニ∞」という関西ジャニーズ勢の大先輩とともにステージに立つ。

そして、シニアから若者まで楽しめそうなのが、「Snow Man」の「ブラザービート~紅白みんなでシェー!SP~」。かつての人気アニメは「おそ松くん」、それを原作とした近年流行りのアニメは「おそ松さん」という違いはあるが、振り付けにイヤミの「シェー!」ポーズが入っていて、昭和から令和にかけて老若男女でシェア可能。彼らのリズミカル&ハッピーなパフォーマンスは“世代”の括りをやんわりと超えてくる。

そして、私もごく最近その名と曲を知るようになった「Saucy dog」。『あぁ、もう。』『いつか』『シンデレラボーイ』など、気持ちの変化と日常の中の温度や日光の変化までが繊細に見えてくる歌詞。泣き声のようなシャウトが心地よく、しかも良い意味でとても“世界観が普通”だ。奇をてらっていない。昔から好きだった気がする、ちょっと不思議な聴き心地である。

このSaucy dogと、同じく初出場となる「Aimer」を聴いて嬉しくなるのは、微妙な季節の移り変わりの表現が素晴らしいことだ。春と秋がかなり短くなっている現実世界を音楽で補い、四季を取り戻そうとしているかのようである。その感性の豊かさが、とても頼もしい。

と偉そうに書いてしまったが、私が紅白で若きアーティストと出会える尊さにハマったきっかけは、ごく最近――。2018年の紅白歌合戦で『Lemon』を歌唱した「米津玄師」である。恥ずかしい話であるが、私はなかなかボーカロイドという文化についていけず、噂は聴きながらも視聴を避けていた。新しい音楽の発信の在り方に、精神的に追いつけていなかった。

次ページ「米津玄師の文明開化」が起こった…
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