20年で市場60%減!「日本のスキー場」逆転の秘策 スキー場で「夏にも稼ぐ」逆転ヒットの根本発想

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「ビジネスを正しく定義する」のは、私のオリジナルの発想ではありません。

前職の外資系戦略コンサル会社ベイン・アンド・カンパニーで戦略論のトレーニングを受けた際、最初に叩き込まれたのが「ビジネスを正しく定義すること(Business Definition)が、現状分析や意思決定を行うためのいちばんの基礎だ」ということでした。

Business Definitionとは、要は「その企業は何のビジネスを行っていて、誰と競合しながら、どのような価値をお客さんに提供しているのか」ということです。このビジネスの定義を間違えると、破滅的な結果に直結します。

「ビジネスの定義」を間違えると有名企業も破綻する

ビジネスの定義を間違った例で有名なのは、デジタルカメラが世の中に出る前、銀塩フィルムの業界で全世界ナンバー1のシェアを誇っていたアメリカのイーストマン・コダック社でしょう。

デジタルカメラを最初に開発したのはイーストマン・コダックとも言われています。しかし同社は、自社のビジネスを「映像を残すための化学フィルムを顧客に提供するビジネス」と定義し、それ以外のビジネスに注力しきれませんでした。そのため、世の中のデジタル化から取り残される形で、結局は2012年に倒産してしまいました。

対照的な会社が、フィルムの世界ではコダックの後塵を拝していた富士フイルムです。同社は自社のビジネスを「顧客が大事な瞬間を映像として残すためのツールを提供するビジネス」「顧客が求める化学製品を提供するビジネス」として再定義しました。

その結果、デジタルカメラや液晶テレビのフィルム、ヘルスケアなどの事業を積極的に展開し、さまざまな分野で世界的なプレゼンスを維持することに成功しています。

その他にも「インスタントカメラ・ビジネス」に固執したポラロイド社(2001年経営破綻)や、ネット通販が急速に拡大する中で「リアル店舗でのおもちゃ小売りビジネス」から脱却しきれなかったアメリカのトイザらス(2017年経営破綻)などの例があります。

ビジネスを正しく定義できるか、環境の変化に応じて正しく再定義することができるかは、その企業の生死を分ける重要なポイントだと言えるでしょう。

では、私たち「スキー場」がやっているビジネスは、どう定義すればいいでしょうか

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