それでも衰えない、ビットコインへの期待 大手企業も続々参入

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実際、きっとビットコインの時代が訪れると踏んで、先行投資する企業は少なくない。

ネット通販大手の楽天は昨年10月、ビットコインの決済システムを提供する米ベンチャー「ビットネット」に出資し、今春から米国向けのネット通販事業を皮切りに、ビットコインでの買い物を可能にする。NTTドコモも今年1月、ビットコインの取引所を運営する米ベンチャー「コインベース」に出資した。リクルートはビットフライヤーの第三者割当増資を引き受けている。

これらは、インターネット通販などの電子商取引(eコマース)の普及を見据えた動きだ。ビットフライヤーは決済代行サービスを手がける「GMOペイメントゲートウェイ」(東京・渋谷)と提携し、クレジットカードや銀行振り込みと同じ土俵で「ビットコイン決済」を事業者向けに売り込んでいる。クレジットカードなら店側が最低でも数%の手数料を負担するが、ビットコインなら1%以下が相場と決まっている。

とはいえ、いくら事業者が導入したところで、わざわざビットコインを買ってまで使う消費者なんていないのでは?

「事業者に対しては、ビットコインで得する分を消費者にも還元しましょうと勧めています。ビットコイン決済のほうが価格が1%安くなるなどの特典を付け、双方が得するような仕組みができれば、消費者からも選ばれるはず」(加納氏)

事業者向けにビットコイン決済システムを提供するITベンチャー「コインパス」(東京・新宿)の仲津正朗社長(37)は、冷静にこう分析する。

「正直、昨日と今日とで大きく価値が変わるようでは、買い物などに使う通貨として流通させるのは難しいと思う。ビットコイン以上に通貨が不安定な国では、はやる可能性があるけど、日本ではやるには日本円以上の安定性が求められます」

汚れたイメージを払拭

課題はほかにもある。

マウント・ゴックスの破綻後も、ビットコインが消えたり盗まれたりするトラブルは相次いでいる。昨年12月から営業を中断した香港の取引所では、最大で460億円がだまし取られた可能性がある。英国などに拠点を置く世界3位の取引所「ビットスタンプ」では、ハッキングによって約6億円分のコインを盗まれ、1月に営業を一時中断。中国に拠点を置く取引所も2億円相当のビットコインが盗まれたとして、2月に業務停止を発表するなど、コイン保有は“危険”と隣り合わせだ。

さらに、匿名性を維持したままコインを受け渡せる点が重宝されて、薬物や武器、盗んだ情報などを取引する闇市場でも、ビットコインが活用される。最近は過激派組織「イスラム国」も石油取引などに利用しているという報道もあった。

健全でない輩(やから)は、日本国内でもうごめいている。暴力団事情に詳しい人物がこう明かす。

「ビットコインを取引に使うような仲間は正直あまり聞きません。しかし、暴力団の資金を元手に、仮想通貨に相場の5~10倍の価格をつけて売りさばく連中はいます。暴力団幹部にまで売り込んでしまい、姿を消したという人もいますが……」

国内のビットコイン事業者が昨秋つくった自主規制団体「日本価値記録事業者協会(JADA)」は、適切な安全管理と不正の防止によって「汚れたイメージ」を払拭することが大きな役務だ。関係者のひとりは、こうため息を漏らす。

「最近もポルノサイトに携わる人物が取引所を開設するなど、グレーな人たちがビットコインのビジネスに押し寄せている。そういう人をJADAに入れるべきではないが、相手をどう判別して対応するかは難しい」

(朝日新聞経済部:藤田知也)

※AERA 2015年3月30日号

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