「公園閉鎖問題」苦情住民だけが悪いと言えない訳 「騒音トラブル」に潜むいくつもの重要な問題点

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子どもの遊び声というのは、音の大きさだけでなく、もう1つ重要な特徴があります。下の図は、園庭で遊ぶ子どもの声の周波数分析結果です。周波数分析とは、その音が高い成分が多いか、低い成分が多いかを分析したもので、子どもの声は1000ヘルツ(図では1Kと表示)~2000ヘルツ(同2K)に明確なピークがあります。

大人の声と比較すると、成人男性の会話の場合の音の高さは、125ヘルツ~250ヘルツであり、成人女性でも250ヘルツ~500ヘルツといわれているので、子どもの遊び声はかなり甲高く、成人男性の約8倍ぐらいの音の高さであるという特徴を持っていることがわかります。

(外部配信先では、図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は「東洋経済オンライン」内でお読みください)

子どもの声の周波数
園庭で遊ぶ子どもの声の周波数分析結果(筆者作成)

声が高いということは、低い音よりうるさく感じることになりますが、逆に良い点もあります。高い音は低い音に比べて対策がしやすいのです。例えば、防音塀を設けた場合、低い音ほど塀の裏側に音が回り込みやすく、高い音ほど回りにくくなるため、防音効果が大きくなります。

例えば、3mの高さの塀をつくれば、子どもの遊び声については約20デシベルの減音効果があります。音の大きさは10デシベル減ると半分の大きさに聞こえますから、20デシベルの減音というのはさらにその半分、すなわち1/4の大きさになります。防音塀による対策は大変に有効でしょう。

問題は「騒音」だけではない

音量的には、子どもの遊び声は確かに大きいといえます。しかし、それがトラブルにつながるわけではありません。現代の音の問題には、「騒音問題」と「煩音(はんおん)問題」の2つがあります。騒音とは、音量が大きくてうるさく感じる音ですが、煩音とは、音量が大きくなくても人間関係や心理状態でうるさく感じてしまう音です。現代の音のトラブル、特に近隣間のトラブルのほとんどは煩音問題です。

騒音問題と煩音問題を分けて考える必要があるのは、それらの対策が異なるためです。騒音問題の対策は音量を下げること、すなわち防音対策です。しかし、煩音問題の対策は防音対策ではなく、誠意ある対応により相手との関係を改善することです。

仮に、煩音問題に際して防音対策だけをやれば、苦情を言われた側にも「対策をやらされた」という被害者意識が生まれます。音を聞かされる側はもともと被害者意識を持っていますから、両方が被害者意識を持つという矛盾の中でトラブルがエスカレートしてゆくのです。

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