トレンド不要?激変する「主婦消費」の真相 流行に敏感なあの"Mart族"の意外な変化

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ある読者に言われたのは、「LINEのネタはあります。フェイスブックのネタはあります。そうではなくて、私たちはお茶してる時に普通に話す話題が欲しい」と。これには驚きました。

――難しいことを言いますね。それは何なのでしょうか。

おそらく、リア充のプレゼン的な話題ではなくて、こんな話って楽しいよね、と純粋に友達同士で楽しめる話題ではないかと。

SNSがこれだけ行き渡って、むしろそういうものに喪失感を感じているんですね。実際、ネット文化の中での行き詰まりみたいなものもあって、もっと素直に人に向き合いたいといった欲求があったり。で、素直に向き合った時に、どんな話をすればいいのかなということが、もしかしたらちょっとわからなくなってきているのかもしれない。

たとえばある飲食店で、ある野菜についてこんなにこだわっています、ということをお店の方がプレゼンしていたんです。そうしたら、主婦の方が「これってさ、直接話す話題だよね」とか言うんです。「え? それは、フェイスブックじゃないの? 」「いや、これは、直接ママ友と話したい話題」だと。

これだけネットが身近な時代になりましたが、でもいったい、誰が本当に自分の味方になってくれるのか。「あなたはそれでいい」というふうに言ってくれるのは、必ずしもネットではないのかもしれない。そこに雑誌の役割があるのではないかと思っているんです。

健康&地方という、新しいチャレンジの狙い

――『Mart』の変化といえば、昨年出された別冊『Sprout』は大変インパクトがありました。知られざる流行りのものをいち早く見つけて紹介する、やや都会的な雰囲気の『Mart』に対し、『Sprout』は郊外や地方に出掛けていって、その地域のおいしいものを食べようというような、はたから見ると対照的な内容になっています。

『Sprout』は健康や、自分の地域ということをテーマに、生活そのものを見直したいという人たちに向けての雑誌にしたいと思って作ったものです。

ここ数年、主婦の方など読者の間で、健康というものがひとつ柱として出てきているな、というのは感じてはいました。ただ、むちゃくちゃストイックに健康を突き詰めたいのではなくて、もっと生活を楽しむ、遊んじゃうといったものが求められていると思ったのです。

もともと、なぜ健康を楽しんではいけないのだろう、と思っていたんです。とくにそう思ったのは、一昨年の年末にロサンゼルスに行ったとき。驚くことに、けっこうノリだけだったりするわけですよ、あちらの人たちの健康って。快楽的なんです。たとえばビーガンのレストランというのは、ストイックにいくんじゃなくて、流行りで行く人もいるわけです。

日本の場合、健康というと楽しむということがそがれることも多いですよね。向こうでは、ブートキャンプそれ自体がファッションになっていて、数十万円とかそれなりの金額のものもあります。

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