なぜマクドナルドの経営改革は"悠長"なのか データから見えてくる内部事情

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最近の報道によれば、「2015年1月におけるマクドナルドの既存店の売上高が、前年比38.6%減」でした。

何度も引き合いに出すようですが、不祥事で売り上げがどん底に落ち込んだ2008年3月期の不二家の売上高は587億円であり、不祥事は発覚前(2006年3月期)の848億円と比べて30.8%の落ち込みでした。

ですから、2015年1月におけるマクドナルドの売り上げ減は、いちばん悪かったころの不二家の下落幅を超えてしまっているのです。

これをなんとか克服しないと、マクドナルドには取り返しのつかない事態が起きかねないのです。

ほかにもあるマクドナルドの不安要素

そもそもマクドナルドは、日本の消費者に、主として外国から調達した食材を供給するという事業を営んでいました。こういう会社においては、円高は有利で円安は不利です。

マクドナルドが日本で開業したのは1971年ですが、当時は1ドル300円台でした。このときのマクドナルドはアメリカの文化を銀座のようなお洒落な街で味わうという個性的な事業をしており、店舗数も少なかったのです。

そのあと円高が進み、とくに1985年のプラザ合意のあとには円が急騰し、1ドル100円台の前半をつけるようになると、マクドナルドは一挙に事業を拡大して大衆路線を歩むようになります。

これは、為替相場がマクドナルドにとって有利(円高)になったことで、価格競争力が増したからでありました。その後、マクドナルドは高い円を存分に生かした経営ができたといえます。

ところで、こちらのグラフをご覧ください。

ここで粗利益を示す売上総利益をグラフにしてみましたが、2010年と2011年までは、多額の利益を稼いでいたマクドナルドの利益額は、2012年に陰りが見えはじめます。そして、2013年には、利益額がガクッと落ち込んでしまったことがわかります。

その最大の要因は、2012年の秋ごろよりはじまった円安です。2012年の9月ごろまでは、1ドル80円程度でしたが、それが、徐々に円安になっていたのです。

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