なぜマクドナルドの経営改革は"悠長"なのか データから見えてくる内部事情

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それは、財務基盤が、強固であって、今日明日のうちに倒産してしまうという切迫感がないだけではありません。そもそも不祥事を起こしたのは、上海福喜食品であってマクドナルドではありません。ですから、マクドナルドは被害者のような顔もできなくはないのです。

これに対して、不二家の場合は、自社の工場の中で問題が生じていたので、けっして被害者ヅラはできなかったのです。自らの深い反省のもとに、矢継ぎ早に改革、改善を行う以外に選択肢がなかったのです。

ところが、マクドナルドの場合には、仕入れ先を変更すればいいので、不二家のように血みどろの経営努力が不要なようにも見えてしまうのです。

たとえば、不二家のときは、不祥事発覚直後において、真っ先に社長が引責辞任をして新体制を作り、新社長が陣頭指揮をとりました。しかし、マクドナルドの時は、社長の引責辞任もなければ、体制の一変もありませんでした。しかも、記者発表では、社長は出てこず、代わりに2人の執行役員が会見をしていました。

聞くところによれば、社長は出張中だとのことでした。この会見を見て、最高責任者が、一大事になのに出てこないのは不思議だと思ったのは、筆者だけではないと思います。最高責任者はクビにもならず、矢面にも立たなかったのです。

追い打ちになった異物混入問題

そのあと、2015年になって、困ったことに異物混入が報道されました。なかでも不可思議だったのは、「ポテトに人の歯が入っていた」というものでした。(まさか…)と筆者は驚きましたし、何かの間違いだろうと思いました。

これは記者会見のときのマクドナルドの執行役員も同じような気持ちであったように思われます。彼らには、何となく「まさか自分たちはそんなものポテトに入れていないと思う」という雰囲気もありました。

そして、筆者も、そういうマクドナルドに対して同情的でした。「ビニールが入っていた」「異物が入っていた」というのはわからなくもないですが、「人の歯が入っていた」というのは不思議です。

とはいえ、これによる顧客離れは避けられません。そして、顧客離れを放置していたら、いくらマクドナルドが外食産業の雄であっても、倒産してしまいます。

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