「趣味のモノを捨てられない」その意外な深層心理 「好きで大事だから」だけではない保存する理由

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「趣味だから」と言って、何となくモノを収集しているケースもあります。バンドワゴン効果とは、「人が持っているモノを自分も欲しがったり、流行に乗り遅れたくない」という心理、ヴェブレン効果とは「希少性の高いモノを購入することで周囲に見せびらかしたい」という自己頭示的消費のこと。

こうした行動心理によるモノの購入は、家のスペースや購入費用をムダにするばかりか、罪悪感や焦燥感を抱く原因にもなります。広告に踊らされてついつい買ってしまったモノを捨てられないケースもこれに該当します。

そういった場合は、収集しているアイテムをビニールシートに広げてみて、グルーピングしてみましょう。

「使わないけれど捨てられない理由」は、下図のように分けることができます。



「これらはDIYグッズだからひとまとめにしよう」などとカテゴリ単位で括らず、1点1点手に取り、「どういう意味で持っているか」という視点で分類していきます。

パートナー同士で「これはあなたにとってどんな意味があるの?」 とお互いに聞いてみるのもいいでしょう。何かしらの意味があるのなら、保管すればいいのです。ただし、「なんでこんなものを買ったの?」とパートナーの価値観を否定する問いかけはNG。パートナーを傷つけるだけです。

過去に投下した資金や労力のうち、戻ってこない費用のことを、経済学の用語で「サンクコスト」といいます。人は一度投下したコストをなんとか取り戻そうと、戻ってこないにもかかわらず、モノに執着し続けるという習性があります。

購入した時のことを思い出ずと心が痛み、認知をゆがめて「自分にとって必要なんだ」と錯覚してしまいます。モノとの過去のエピソードには触れず、今後どのように使用するか、という観点でのみ、質問を行ないましょう。

「このストレッチ器具ってどうして家に置いてあるの?どんな時に使うのかな?」といったように、1つひとつのモノに対して、持っている意味を尋ねるのがいいでしょう。 

1回で片づけようとしない

思い出や応援など、ポジティブな気持ちで持っているモノならまだしも、しがらみや意地で持ち続けているモノばかりが増えると、本人にとっても恩苦しい空間になってしまいます。特にコンプレックスを想起させるモノは、精神衛生上、外に出すのがおすすめです。売る、譲る、預ける、(ベランダのコンテナや実家に)移すなど、モノと距離を置くことを提薬してみましょう。

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実際、趣味のモノの片づけは、本人に手をつけてもらうまでが最もハードルが高いのです。1回で整理を完了しようと思わず、根気よく片づけに付き合ってあげましょう。

米田 まりな 整理収納アドバイザー1級

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こめだ まりな / Marina Komeda

2014年に東京大学経済学部卒業後、住友商事に入社し、Eコマース領域の事業投資を担当する。2017年より株式会社サマリーに出向、資金調達とデータ解析を主に担当している。2020年4月から一橋大学修士課程(金融財務専攻)に入学予定。脚本家の祖父・研究者の父の影響を受け、茨城県・宮城県でモノに囲まれた幼少期を過ごす。都市・地方の住宅状況格差に関する自身の経験や、100万人の"モノデータ"を扱う企業サマリーで行ってきた消費者調査結果を元に、「捨てないお片づけ」を提唱。作家・デザイナー・起業家など、"モノを愛してやまない人"を対象に、片づけの活動を行っている。

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