「お客様は神?」日本で"クレーマー"が増殖する訳 「日本独特の思考」が"カスハラ"を増やしてる?

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そもそも、海外では、チップが発生しない場合、スタッフの愛想もサービスも、本当にひどいものです。

総じて無愛想で、 態度が大きいので、「売ってくださってありがとう」「飛行機で食事を配ってくださってありがとう」と、客であるこちらが恐縮してしまうほどです。

もちろん、全世界にクレーマーは存在しますが、日本のようにスタッフの側がへりくだることはなく、毅然とガチンコで向き合うことがほとんど。客が声を荒らげたり、暴力的な言葉などを発したり、一線を越えれば、即、警察やセキュリティーが対応します。

一方で、日本ではこうした「カスハラ」に組織的に対応するシステムが未整備で、現場任せになりがち。現場の人間に大きな負担がかかってしまうというわけです。

労働法が専門の芦原一郎弁護士に直接伺ったところによると、「日本では、多くの経営者がこうした現場の社員を守る義務を負っていることを理解していない。明確なルールもなく、現場に対応が任されているケースも多く、その負担を押し付けられた末端の労働者は疲弊している。『この言葉が出たら、こういう態度だったら、こうする』などといった明確なマニュアルを作るなど、一線を越えたら毅然として対応できるようにルール化をし、現場を守らなければならない」と話していて非常に腑に落ちました。

お互いが「感謝」と「敬意」を表すことが大事

職業に貴賎はなく、上下関係もありません

ただでさえ人手不足なのですから、客側とて「サービスを提供してくれてありがとう」と、まずは、しっかりとお礼を言うべきでしょう。

「客は神」という間違った幻想を解き放ち、お互いがまずは「感謝」と「敬意」を表す。このコミュニケーションの基本動作を共有するところから始めるべきではないでしょうか。

岡本 純子 コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師

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おかもと じゅんこ / Junko Okamoto

「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。

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