はるか先に「日米統合軍」が見えている 防衛ガイドライン見直しの焦点とは?

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――両国の同盟にはどのような影響を及ぼすだろうか。

米軍と日本軍が効果的に協力し合うためには、お互いのC4ISR(Command, Control, Communication, Computer, Intelligence, Surveillance and Reconnaissance)の能力を統合することが重要だと思う。これは大きな挑戦だが、実現すれば、共同計画、共同訓練、基地の共同使用などにより、作戦をもっと密接に統合できる。

――日米統合軍は想像しにくいコンセプトだが、集団的自衛権の行使容認をしたことは、そこへの道に繋がるのだろうか。

はるか先に、 日米統合軍が見えている。まず最初のステップは、限定的な形で日米が特別部隊を編制することから始まるだろう。

――日本が武器輸出を解禁した背景をどう分析しているか。

世界にある広範な技術や市場へアクセスするためだ。国内の軍需産業を保護するためには、武器輸出禁止を緩和する決断が必要だった。英国とフランスの軍幹部や軍需産業の指導者達は日本の決断を歓迎しており、軍需産業の協力を楽しみにしていると言っていた。

ミサイル配備に反対する中国は偽善的だ

――韓国との戦略関係には問題が残っている。

北東アジアの安全保障は、日本と韓国の関係改善によって多大な利益を得る。韓国国防軍と日本の自衛隊という軍事レベルでは、非常に友好的な関係にある。断絶はソウルと東京の政治レベルで起こっている。両国は情報共有に同意しているものの、北朝鮮の核関連およびWMD(大量破壊兵器)に制限されている。さらなる情報共有により、北東アジアの安全保障環境を強化する必要がある。

THAAD (高高度ミサイル防衛体系) の配備に関しても同じことが言える。中国はTHAADにおいて米国と韓国が協力することに反対している。しかし、THAADは北朝鮮のミサイルがもたらす韓国への脅威に焦点を置いたものだ。北朝鮮の経済を支え続ける一方で、THADDを使用して自衛を強化することを目指す韓国の批判をする中国のやり方は、偽善的といえる。

―― 日本と韓国の絆を改善するための良い案は?

韓国と日本の関係が前進するための鍵は、両国の指導者たちが、21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップとして知られる1998年10月の金大中大統領と小渕恵三首相の共同宣言に戻ることだと思う。そのためには、両国に強力な政治的指導者、本物の政治的手腕が必要とされる。しかし、金元大統領と小渕元首相が一度はできたことなのだから、不可能なことではない。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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