日本郵政、上場を前に目立つ泥縄式経営 ゆうちょ銀行社長兼務とIFRS採用表明の裏側

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IFRSでものれん償却の要否は議論の的

もっとも、IFRSにしても、企業結合に伴うのれんについては償却すべきではないかとの声が強まっており、今年、未償却のままでよいのか償却すべきか、IASB(国際会計基準審議会)で議論がなされる見込みと、流動的な状況だ。この点や上場前の導入の可否についての質問に対し、西室社長は「方向付けとして採用の準備を始めた。(IFRS移行は)時間やコストがかかり大変なこと。上場には間に合わない。IFRSの議論を見ながら将来、適用できる状態にしておくということ」とする。

こうした言葉をそのまま受け取れば、トール社買収が評価を受けなかったのでIFRS採用を視野に入れた、と聞こえ、思いつきのレベルを脱していないようにも受け取れる。

JPグループは民営化して間もなく、日本郵便が他金融2社に較べ自己資本や使途に制約のないキャッシュの厚みで劣るなど、財務面に歪な形が残っている。昨秋にはグループ各社の資本配分見直しを行った。関係者からは「上場前に再度、資本の見直しを行うのではないか」とも囁かれるが、IFRS導入以上に優先度の高い財務的課題があるように映る。

現在、JPは中期経営計画を見直し中で、3月内に策定する方針だ。ゆうちょ銀行社長人事とともに、泥縄的経営を脱することが出来るか、試金石となる。

石川 正樹 東洋経済 記者

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いしかわ まさき / Masaki Ishikawa

『会社四季報』元編集長。2023年より週刊東洋経済編集部。

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