2023年の「日米の株価」はどのように動くのか 行きすぎた悲観相場の修正後に待ち受けるもの

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こうして、2023年には株価でいえば上昇から下落へ、さらに下落から上昇へと、2度ほど大きな転換点を迎えるとの予想だ。大きな転換点の前後では、「天底荒れる」の格言どおり、渦中では、転換点をすでに過ぎたのか、それともこれからなのかは、明確にはわからないだろう。

通り過ぎてみて、「ああ、あそこが転換点だったのか」とあとからわかるものと考える。天井と底のタイミングや価格水準を事前に決めつけ、それにこだわるのは危険だ。頭と尻尾は犬にくれてやり、自身の欲につぶされないことが必要だ。

中国リスクに要警戒

こうして述べてきたような2023年の年間シナリオを大きく揺るがすリスク要因としては、中国のさまざまな動向が挙げられる。足元ではゼロコロナ政策が景気に与える悪影響が懸念されているが、米中関係も影を落とすだろう。

それは、台湾海峡などをめぐる安全保障面でのリスクもあるが、アメリカが中国に対して経済安全保障の観点から、アメリカ市場から中国企業を締め出しにかかるなど、強硬策を推し進めている面も懸念される。

加えて、中国における民間債務の大きさも気がかりだ。民間非金融部門(銀行、証券、保険を除く民間企業と家計の合計)の債務残高をとって、対名目GDP比率を測ると、足元では220%(債務が経済規模の2.2倍)にも達している。

アメリカでのリーマンショック時の同比率が140%程度であったため、それを凌駕する債務の大きさということになる。この債務問題が大きく表面化するのか、それともこれまでのように、一部企業の社債のデフォルトなどにとどまるのかは、見通しがたいが、大きなリスク要因として頭に置いておくべきだろう。

中国の経済や金融情勢、株価などが危機の様相をまとえば、日本は経済的にも地理的にも近いため、日本株に大きな悪影響が生じると懸念される。中国株が下落していけば、グローバルな投資家が中国から日本に資金を移す、との楽観論を述べる向きもあるようだ。だが、むしろ投資家は中国から最も影響が小さそうな国々へ資金逃避を行なうだろう。日本企業が「脱中国」を推進できるかどうかが、カギとなりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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