JR東海の危機、リニア推進「静岡市」が反対派に? 川勝知事の懐刀が市長選へ、現職は不出馬表明

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難波氏は要請文で、「山梨県内の先進坑が山梨・静岡県境から約920mの地点に達しているため、静岡県内の水がトンネル内に引っ張られ、山梨県側に流出する懸念が高まっている」、「本来、地質調査は、工事実施前に地表からのコアボーリングを行うべき」、「県境を越えて高速長尺先進ボーリングを行うと、静岡県内の地下水に影響を与える懸念があるので回避策を示せ」などと何の根拠を示さないで、JR東海へ“無理難題”を投げつけて、辞めてしまったのだ。

高速長尺先進ボーリングに“横串を刺した”難波氏である。静岡市長に就けば、リニア開業に向けて大きな障害になることを、JR東海は十分、承知している。

南アルプスのふもと、リニアトンネル工事の本拠地となる、静岡市井川地区の代表者3人が11月30日の会議に出席して、「ユネスコエコパークの自然を生かした経済活動を行っている。着工しながら問題解決ができるのではないか」「このままではユネスコエコパークを守る(過疎の)井川地区がなくなってしまい、工事に間に合わない」などいたずらに議論を長引かせる県の姿勢を厳しく批判した。

難波氏の対抗馬は?

難波氏は清水港関連の経済界の全面支援を受けるが、井川地区を含めて大票田となる葵区、駿河区の旧静岡市の経済界、商店街、自治会などの支持は取りつけてはいない。

自民党党籍を持つ山田誠・元県議がすでに出馬表明しているが、自民党静岡市議団は、周囲の状況を踏まえない山田氏への支援に消極的だ。

難波氏に対抗できる有力な候補を擁立できるのか、自民党静岡支部は対応を急ぐ必要がある。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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