あなたにも出来る!社労士合格体験記(第27回)--さんざんだった2度目の行政書士試験

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あなたにも出来る!社労士合格体験記(第27回)--さんざんだった2度目の行政書士試験

2005年10月23日は、私にとって2度目の行政書士試験。会場は明治大学和泉キャンパス、受験番号は2570355でした。ただこの年は、8月の社労士試験が終わるまでは、ほとんど行政書士の勉強ができず、準備不足感は否めませんでした。

案の定、最初の法令科目択一式からてこずり、記述式でも苦しみました。前回の試験で、最低基準点に達しなかった一般教養科目は何とかクリアしたものの、手応えでは明らかに総得点が足りません。試験終了後は解答速報会へ行く気力も湧かず、ネットの速報で自己採点。5割5分くらいの出来で、やはり6割の合格レベルには届きませんでした。

イライラする迷惑メールの山

さらに、試験がきっかけで、イライラの副産物まで舞い込みました。一般教養科目で出題された、いわゆる「迷惑メール防止法」の問題が発端です。その中に「受信者が受信拒否の意図を送信者に伝えると、送信者はそれ以降特定電子メールの送信を止めなければならない」という、法令上は正しい選択肢が含まれていました。

ちょうど私のアドレスにも迷惑メールが少し増え始めていたので、試験問題に当を得たりと、受信拒否のメールを返信。しかし、結果は止まるどころか、毎日、数百通のイライラする迷惑メールの山また山です。まさに、弱り目にたたり目という状態で落ち込みました。

自分にとって本当に大切な事とは

私が試験に悪戦苦闘しているのと並行して、妻は目の病気と闘っていました。こちらは人生の一大事。私も、試験中も仕事中も、心ここにあらずで、手術が成功したと聞いたときは、ホッとしつつも疲労困憊していました。

一昔前なら、手術後の生活も大変だったのではないでしょうか。しかし、眼科医療も日進月歩で、今ではコンタクトレンズが眼組織の代替をしてくれるため、日常生活はほとんど支障ありません。離婚届まで用意した妻でしたが、「心眼が第一よね」と調子のいいことを言い始めていました。

試験は、また来年になればチャンスがあります。イライラする迷惑メールの山も、無視すればいいだけです。私にとっては家族が元気で、明るく、仲が良いのが一番大切なことだと痛感させられた出来事でした。

付加給付のメリット

ところで妻の治療代は、私が当時、任意継続被保険者だったことでメリットがありました。サラリーマンの健康保険の保険者は大きく2つに分かれています。08年10月に政府管掌から替わった協会けんぽ(全国健康保険協会)管掌と健康保険組合管掌の2つです。

ここでポイントとなるのは、健康保険組合には「付加給付」というものが認められている点です。つまり法定給付と併せて、「規約」で定めることにより、独自の上乗せ給付ができることになります。もちろん任意ですので、「付加給付」をするか否かはそれぞれの健康保険組合次第です。

ところが運よく、私の健康保険組合では「高額療養費」に関する「付加給付」が規約に定められていました。すでに退職した会社、しかも数カ月しか勤めなかった会社の健康保険組合の細かい規定なぞ知る由もなく、何となく選んだ任意継続にこんなメリットがあるなんて正直びっくり。同じ健康保険の中でも、そして健康保険組合の中でも差があるということを、身をもって学習しました。

紛らわしい数字に注意しよう

さて、社労士試験では健康保険組合の任意設立についての人数要件がよく問われます。1又は2以上の適用事業所については「常時700人以上」、共同設立の場合は合わせて「常時3000人以上」の被保険者を使用する事業主が設立できる。そして、事業主は適用事業所に使用される被保険者の「2分の1以上」の同意を得て規約を作り、厚生労働大臣の認可を受けなければならないという規定です。

紛らわしいのは、厚生年金基金の設立要件との違いです。厚生年金基金の場合は、1又は2以上の適用事業所については「常時1000人以上」、共同設立の場合は「常時5000人以上」となります。そしてさらに、健康保険組合同様の、被保険者「2分の1以上」の同意と大臣認可の規定だけではなく、適用事業所に使用される被保険者の「3分の1以上」で組織する労働組合があるときは、事業主は当該労働組合の同意を得なければならないという規定が加わってくるのです。

法改正の数字にも注意

紛らわしい数字が出てきたので、10年の健康保険法改正部分の数字も確認しておきましょう。改正になった部分は一般保険料率の範囲です。従来は「1000分の30から1000分の100の範囲内」となっていたものが、「1000分の30から1000分の120までの範囲内」と上限が拡大されました。そして、この数字は、協会管掌、組合管掌ともに変更されています。

背景には医療費増加と財源不足の問題があります。現在、協会管掌健康保険の一般保険料率は都道府県単位で定められていますが、11年度もすべての都道府県で保険料率が上昇しました。ちなみに全国平均は9.5%(1000分の95)となりましたが、12年度はさらに上昇が見込まれ、近い将来10%を超えるところも出てくるかもしれません。そこで早めに法的な手当てがなされたわけです。

次回は、社労士試験の合否通知です。

【毎月第2・第4火曜日に掲載予定】

翠 洋(みす・ひろし)
1958年愛知県生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、ラジオたんぱ(現・ラジオNIKKEI)入社。番組制作、報道、出版事業などを経て45歳で退職。延べ1年半の失業期間の後、NHK「地球ラジオ」の専属ディレクターとして3年勤務。その間、ファイナンシャル・プランナー(AFP)に登録。2007年4度目の挑戦で「行政書士」合格後、行政書士法人で外国人の日本在留ビザ申請代行業務に従事。「社会保険労務士」には、2008年4度目の挑戦で合格。現在は、職業訓練講師として「人事労務基礎科」「基礎演習科」などを教えている。趣味はアルトサックス演奏、温泉巡り。「語学オタク」。

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