事故を起こしても車が直らない日本未来の危機 自動車整備学校入学者が激減、整備士が不足に

拡大
縮小

かつてクルマは若者にとって"憧れの存在"だったが、もはやそうではなくなってきているのだ。クルマへの関心が薄れて、整備会社を就職先として具体的にイメージしづらくなっているのである。クルマが「機械」ではなく「コンピューター」へと変貌してきていることもある。

未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること (講談社現代新書)
『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること 』(講談社現代新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

バンパー1つとっても、いまはセンサーがたくさん組み込まれている。クルマの構造を理解していることはもとより、だんだんコンピューターの知識も求められるようになってきている。短期間での技術革新に対応できないと敬遠する人もいるだろう。

だが、整備士不足にはさらに大きな要因がある。大学進学率の上昇だ。製造業や自動車整備業界を就職先として考える対象者が18歳人口の減少以上に少なくなっているのである。

18歳人口が減っていくにもかかわらず、文部科学省は大学数を増やす政策をとってきた。当然ながら入学定員割れが常態化する大学が増えた。そうした大学では「入試改革」と称して、かつてならば不合格にしていたレベルの受験生が入学できるよう新たな推薦入試枠などを設ける動きを拡大させてきた。その結果、長らく日本の各産業を下支えしてきた仕事に就く層が薄くなってしまっているのである。

河合 雅司 作家、ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

かわい まさし / Masashi Kawai

1963年名古屋市生まれ。中央大学卒業後、産経新聞社入社。同社論説委員などを歴任後、一般社団法人人口減少対策総合研究所理事長。高知大学客員教授、大正大学客員教授、産経新聞社客員論説委員、厚労省ほか政府の有識者会議委員も務める。「ファイザー医学記事賞」大賞ほか受賞多数。主な著書に『未来の年表』(講談社現代新書)、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)、『コロナ後を生きる逆転戦略』『世界100年カレンダー』。2021年6月に『未来のドリル』(講談社現代新書)を刊行。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT