【産業天気図・鉄鋼】自動車向け需給逼迫、原材料高の販価転嫁も浸透。高炉各社の業績は過去最高水準に

●お天気概況
 高炉大手の前期業績は過去最高水準を記録し、足元は『快晴』の状況。牽引役は自動車業界向けの高級鋼材出荷で、需給は今もなお逼迫している。これを受けて原材料の値上がり分の鋼材価格転嫁も順調で、今期、増収増益を見通す。例えば新日鉄はこのほどトヨタ自動車と今期4月分出荷からの販価を1トン当たり1万円値上げで決着したとされる。それでも1989年当時の価格を100とすると、現状は8割程度に戻ったに過ぎない。トヨタのような大口需要家向け(ヒモ付き)の価格は歴史的経緯もあって国際水準に比べて割安で推移してきた。こうしたヒモ付き市場はメーカーと需要家の直交渉で値段や数量が決まる。よって建材等市況品が流通する条鋼市場の価格推移とは完全に区別する必要があり、大手鉄鋼商社ですらヒモ付き価格の実情はブラックボックス状態にある。大口需要家の筆頭格であるトヨタと日産は、鋼材の安定確保という観点から今回、原料価格高騰の一部転嫁に応じたものの、鋼材の種類や契約期間、数量等でパターンがあり、会社ごとに違うため、浸透に時間を要することに変わりはない。

●今後の注目点
 「これを最後にしてほしい」とトヨタ幹部が新日鉄側に迫ったように、最終ユーザーへの価格転嫁を避けたいトヨタが見せる鋼材単価値上げに対する財布のひもは、これまで以上に堅くなりそうだ。このため今後、鉄鉱石やコークス、原油などが一段高になった場合は、再び「粘り強く交渉に当たるしかない」(新日鉄幹部)。スポットで合意しても、89年当時への100%回復という高炉大手の悲願は成就していない。なお、06年度業績については、高級鋼材を扱う単体決算は05年度と同様に堅調推移が見込めるが、条鋼類を扱う電炉メーカーやエンジニアリング子会社を連結すると、若干減速する可能性が広がりつつある。
【古庄英一記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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