売れ筋は105円!老舗問屋が古着店に驚きの転身 創業は明治、ショッピングセンターへの出店も

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しかし、たんぽぽハウスが買い取っているのは、使い古しのノーブランド品ばかり。羽久の3代目である羽田健一郎社長は「古着屋のしまむら、西松屋のようなもの」と語る。

羽久の羽田健一郎社長
羽田健一郎社長は羽久の3代目。1989年、ハードオフのビジネスモデルをみて、古着屋チェーンへの業態転換を思いついた(記者撮影)

「25〜50円で買い取って105〜315円で販売するので、利益率は非常に大きい。でも、利益の絶対額は小さい。家賃、人件費、倉庫代などを考えると、相当の数を売ってはじめて利益を出すことができる」と羽田社長は言う。そこで重視するのが商品の販売点数だ。現在、全店で年間500万点ほどの商品を販売している。

たんぽぽハウスの運営は羽久とその子会社のヴァンベールが行っており、年商はそれぞれ1.8億円(2022年6月期)と2.7億円(2022年3月期)。2社を合計すると年商は4.5億円。純利益は2社あわせて1000万円だ。

2019年のピーク時には年商7.2億円までいったのだが、コロナ禍の直撃で日々の売り上げは一気に半減。多店舗展開による家賃負担の重さに耐えきれず赤字に転落。そこで浅草店など家賃の高い不採算店の店じまいを断行。2020年には4店、21年には2店閉じた。「実はコロナになる前から採算の悪い店が増えていた。まずは赤字体質から脱するために身を縮めた」。

社会貢献は「結果」

Twitterで「たんぽぽハウス」を検索してみる。すると、さまざまな客層がいることがわかる。サバイバルゲームで使う服をたんぽぽハウスで探す人もいれば、せどりのための宝探しをしている人もいる。初めて買い物をして、その品揃えと安さへの感動をつづる人も多い。

「たんぽぽハウスは常連さんに支えられている。家計の余裕がなく、たんぽぽハウスを頼りにしているお客さんが多いし、そうした人たちが増えているように思う」と羽田社長は言う。地元に出店してくれたことへの感謝の思いが綴られたハガキも届く。差し出し人が書かれていないそのハガキを、羽田社長は額に入れて飾っている。

格差社会が広がる中で、激安の古着屋はセーフティーネットの役割を果たしているのかもしれない。社会貢献を考えて事業をやっているのだろうか。そう尋ねると、言下に否定した。「会社が生き残るために必死でやっているだけ。結果として何らかの貢献になっているのであれば嬉しいけれども、そのためにやっているわけではない」。

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