日立、英国で近郊車両を受注した意義 鉄道ビッグ3の背中は見えたか?

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笠戸から出荷されるIEPの車両

日本でも標準型車両の引き合いは少しずつ増えているが、鉄道会社の車両へのこだわりが強く、独自車両を製造して納入するのが一般的だ。ただ独自部分が多いほど、メーカーにとっては利益が薄くなることが多い。

今後の戦略は、英国の実績を手掛かりに大陸へ進出することだ。そのために2015年2月に買収を発表したイタリアの鉄道信号事業のアンサルドSTSと、車両事業を行うアンサルドブレダのネットワークも利用していく。

故障頻発の問題児をどう立て直す?

2社の買収により日立の鉄道事業の売上高は、約1500億円から4000億円と2倍以上になる。これにより売上高8000億円を超えるビッグ3(加ボンバルディア、独シーメンス、仏アルストム)との距離は縮まることになるが、2社を統制するのは簡単なことではない。

特に車両事業を行うアンサルドブレダは約300億円の赤字を出し(2013年12月期)、故障や納期遅延も頻発。訴訟に発展した例も少なくない。買収の条件として2000人規模のアンサルドブレダの雇用を維持することでも合意し、同社が持つ工場も活用していく方針だが、オペレーションの改善が今後の大きな課題になりそうだ。

だが、2社の買収に先立つ2014年4月、日立は鉄道部門を統括するグローバルCEOの役職を新設。初代CEOに英国人を据え、本社機能も英国に移すなど、欧州進出に強い意欲をすでに示していた。

その他の事業においてもグローバル化を進めている日立は、鉄道事業をそのロールモデルとして位置づけている。困難は承知のうえでビック3への挑戦は続く。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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