希代の勝負師・森保一監督「超攻撃布陣」の意図 選手も驚き、ぶっつけ本番の3バックがズバリ

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一方で、前半はほとんど高い位置を取れなかった右の快足ウイング・伊東純也(スタッド・ランス)が強引な仕掛けに打って出て、鎌田大地(フランクフルト)がシュートを放つといったプレーが出始めたのも事実だ。

後半12分には、浅野拓磨(ボーフム)と三笘を2枚同時に投入。前田と代わった浅野がグイグイと前へ飛び出して相手に脅威を与え、三笘も左サイドからの得意のドリブル突破でリズムをもたらす。ドイツのギュンドアンのシュートが右ポストを叩く幸運も後押しし、日本は確実に反撃態勢に突入したのである。

この流れを大きく後押ししたのが、後半25~26分にかけてのGK権田修一(清水)の4連続セーブ。ピッチに入ったばかりのヨナス・ホフマン(ボルシアMG)のシュートに始まり、セルジュ・ニャブリ(バイエルン)の3本連続シュートと合計4本の決定機を阻止したことで、チームに活力が生まれた。

「もう必死ですよね。シンプルにもう止めるしかないじゃないですか。どういう状況であっても、枠に飛んできたシュートを止めることしか僕の存在意義はない」と33歳にしてW杯初出場を果たした守護神は強調。前半のPK献上の挽回以上の強烈なインパクトを残すことに成功した。

アタッカー6人の超攻撃的布陣に

森保監督は機を見逃さず、ここから次々と攻撃カードを切っていく。直後に堂安律(フライブルク)を起用。これまでのケースだと、堂安は同じポジションの伊東と代わるのが常だったが、この時はボランチ・田中碧(デュッセルドルフ)と交代。堂安と伊東が2シャドウに並ぶという過去の代表戦で一度もやったことのない形にトライしたのだ。

この3分後には、エースナンバー10を背負う南野拓実(モナコ)を抜擢。彼を右ウイングバックの酒井宏樹(浦和)と代えて、今度は堂安・南野を2シャドウに並べた。右ウイングバックに伊東が移動し、鎌田もボランチに入っていたから、中盤より前は遠藤以外の6人がアタッカーを本職とする人材。まさに「超攻撃的」と言える陣容になった。

正直言って、守備に綻びが生じる危険性も大いにあったが、森保監督は「一気に攻め込んで、点を取りに行き、力でねじ伏せる」という強いメッセージを発信したのである。これが選手たちに強く響き、南野登場直後に堂安の同点弾が生まれる。三笘のドリブル突破から南野が敵の背後に飛び出し、放ったシュートのこぼれ球に堂安が詰めるという理想的な形からのゴールだった。

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