森トラスト、雅叙園を5カ月で転売した舞台裏 "2014年の目玉物件"を電光石火の売却

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実は、森トラストとCICは昨年前半までは、共同でローンスターから雅叙園を購入する手はずだった。ところがCICは、ローンスターが期限とした同年8月までに機関決定ができなかったため、購入を断念。一方の森トラストは、雅叙園にアマゾンジャパンなど大手外資の日本法人が数多く入居していることから、「4%台の利回りを確保できる」とそろばんをはじき、単独での出資に踏み切った。

2014年9月、東洋経済の取材に応じた森章社長(撮影:梅谷秀司)

ただし、この段階では森トラストにも明確な出口戦略はなかった。昨年9月の東洋経済の取材に対し、同社の森章社長は「長期保有もありうるし、いい相手先があれば売却も検討する」と発言している。

その後、オフィスビルのテナント誘致や賃料改定などを進めていたところ、複数ファンドから売却依頼が来たようだ。その中の1社がCICだった。そこで森トラストは昨年11月、本気度を見極めるため、CICに対して文章で金額の提示を求めた。CICが出してきた価格が一定の基準を満たしたため、譲渡を決断したのだという。

押し寄せる外資の波

結果的とはいえ、雅叙園に絡む売買でウェアハウジング機能(投資企業が取得しようとしている不動産を一時的に保有すること)を担った森トラストは、短期間で130億円もの利ザヤを稼ぐことに成功した。この資金は次なる成長戦略への原資となる。

同社は今後も、海外ファンドの日本市場への投資を呼び込む構えだ。海外ファンドは購入の意思決定や資金調達スキームの設定に時間がかかることに目をつけ、ウェアハウジング事業を積極展開する。

森トラストが外国人向けの事業を本格化する背景には、外資系法人の日本への投資意欲の高まりがある。

みずほ信託銀行系のシンクタンク、都市未来総合研究所によると、日本市場における2013年の不動産売買取引額は4兆8000億円で、「ミニバブル」といわれた2007年に次ぐ水準だった。2014年は5兆2000億円と、さらに勢いが増している。

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