閉ざされた若者たちよ、"和僑"を目指せ 香港和僑会の荻野正明会長に聞く

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――実際に、4点セットでスタートした事業はありますか。

第1号案件は、昨年末に立ち上げたアイスクリーム事業。徹底して「和」にこだわった。抹茶風味にし、トッピングのイチゴは「甘王」。中に入れる大福は四国の小さな餅屋さんから特注で取り寄せた。起業相談室で三十数回のミーティングを重ね、プランを磨き上げた。狙いすまして出した1号店はたった5.5坪で月商1000万円を超えています。今、2号店、3号店を準備中です。

和僑会はシンガポールやバンコク、ホーチミン、ヤンゴンにもあります。香港の4点セットが成功したら、このやり方がほかの和僑会にも広がっていくかもしれない。

日本を覆う閉塞感の突破口に

実は、50年前とは違い、現在の香港には分厚い中間層が生まれています。どっぷり安定志向に浸かってしまい、起業しようという若者は100人に8人いるかどうか。日本はもっと早い段階でそうなっている。このままではいよいよ閉塞感が強まると分かっていても、政府も"ニッポン株式会社"も何もできない。

今の若者は時間の9割をスマホに支配されています。スマホを通じて膨大な情報を吸収する一方、隣の人間とは「あっ、お前いたの」。

そうではなく、隣の人間とリアルなつながりを構築し、和僑として羽ばたこう、というのが和僑会。華僑は海外で成功すると、自分の生まれ故郷に莫大な資金を寄贈します。おカネの寄贈ではないけれど、海外に飛び出した和僑がまた、次の和僑を引っ張り出す力になれれば、と思います。そういう循環ができれば、日本を覆う閉塞感の一つの突破口にもなり得るのではないでしょうか。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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