停戦交渉への機運醸成に失敗したプーチン大統領 現段階での停戦交渉は時期尚早だ

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従来ウクライナでは、冬季には軍事作戦の実行が難しくなるとの米欧の専門家からの指摘に対して、懐疑的な意見が大勢だ。ウクライナの軍事専門家ミハイル・サムシ氏も「なぜ西側の軍事評論家が冬に軍事作戦ができなくなると考えるのだろう。21世紀の軍隊には何の問題もない。中断の必要性はない」と指摘する。

ロシア側ですら、2022年2月末の侵攻開始は1カ月早いほうがよかったとの指摘があったくらいだ。12月に入れば、冬本番で地面は凍結し、兵員や軍用車両は雨でぬかるむ秋より、動きやすくなる。しかし、冬季の戦闘継続性という基本的評価をめぐり、アメリカ軍トップ2の間でこのような認識の差がなぜ生じるのか。モヤモヤ感が残った。

ウクライナは年内に新たな反攻作戦も

いずれにしても、ウクライナ軍はこのサムシ氏の言葉通り、交渉を拒否したまま、年内にも新たな反攻作戦を開始するといわれている。

これに関連して、ミリー発言の背後におそらくある「停戦交渉必要論」が誤りであると筆者は指摘したい。一般的に考えれば、戦争は悪であり、平和は善である。この基本原則が正しいことは論をまたない。この観点から、早く停戦交渉に移り、兵士や一般市民に多数の死者を出している戦闘をまずやめるべきとの意見が出ることは理解できる。

しかし、今回のウクライナ侵攻は第2次世界大戦後の歴史において、極めて特殊な侵略戦争である。プーチン氏の侵攻の狙いは独立国家としてのウクライナの消滅である。それは、4000万人のウクライナ国民から、そのアイデンティティを奪うことである。住民虐殺や多数の児童のロシアへの移送などの戦争犯罪的行為の真の目的はこれである。ここが、国境紛争や経済権益争いなどを原因とする一般的な国家間戦争とは決定的に異なる。

常軌を逸した戦争を始めたプーチン氏が現時点で上記した戦争目的を断念、あるいは積極的に放棄したとの情報は皆無だ。全占領地を放棄するなどの譲歩を行う姿勢もまったくうかがえない。

この現状下で停戦交渉を呼び掛けるプーチン政権の最大の狙いが「時間稼ぎ」であることは明白だ。南部要衝ヘルソン市からの撤退を余儀なくされるなど、ウクライナ軍に主導権を奪われている戦闘を一時停止することで、軍の態勢の立て直しを図るつもりだろう。この間に追加の動員令を発して兵力を増やし、イランや北朝鮮からの武器供与交渉を進めて戦力増強を図る可能性が高い。

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