楽天が今度は配車サービスに出資した狙い 海外企業への連続出資は実を結ぶか

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今年で海外展開10年目を迎える楽天は、2014年から海外企業への出資も積極的に行っている。同年2月には無料通話・メッセージアプリのバイバー・メディア(キプロス)を935億円、9月には他社ECサイトの集客を支援するイーベイツ(米国)を1047億円と、過去最大規模の買収を2件実施。ほかにもECのビッグデータを解析するスライス(米国)の買収や、エアアジア(マレーシア)に出資して航空周辺事業に参入するなど、本業とは違う事業を手掛ける会社にも食指を動かしているようだ。

楽天の海外投資が加速している背景には、三木谷社長自身がシリコンバレーでも生活し、有望な市場や企業の最新情報を得ていることがある。積極的な投資を続けていることで、シリコンバレーでは、投資機関としての楽天の存在感が急激に高まっている。

海外は出資先とのシナジーに課題

東京とシリコンバレーに拠点を置くベンチャーキャピタル「WiL」共同創業者の伊佐山元CEOは、「ITビジネスの"聖地"であるシリコンバレーでは、一般的に日本企業の存在感がまったくないが、楽天とソフトバンクに限っては認知度が高い」と話す。「楽天やソフトバンクが投資で成功すれば、日本企業の名が上がる。ほかの日本の起業家やベンチャー投資家にとっても追い風になる」と期待する。

ソフトバンクは2000年に20億円を出資したアリババが2014年9月に上場し、約7兆円に上る巨額の含み益を得た。三木谷社長も、「自分で情報を集めることができて、大金を動かすこともできる」(伊佐山氏)だけに、出資先の企業が一つでも大きく花開けばその見返りは大きい。

ただ、巨額の投資が続けば、結果を出すまでにあまり悠長に構えることは許されない。国内ではECや金融で強固な事業基盤を築いた楽天だが、買収を重ねてきた海外事業を含む「その他インターネット部門」は先行投資で赤字が続く。

国内では「楽天市場」での買い物を「楽天カード」で支払うことに代表されるように、グループ内のサービスを結びつける「楽天経済圏」の戦略が成長の原動力となった。しかし、海外では買収したり出資した事業の間で明確なシナジーが見えてこないのが現状だ。海外事業間の連携を実現することが、真のグローバルカンパニーとして成功するために求められている。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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