野宿で死ぬ子も…欧州「難民大量流入」悲惨な現状 難民受け入れ国「優等生」のドイツですら悲鳴

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新たな難民危機はさらに、誰が難民を受け入れるべきかという議論を復活させるものともなっているが、各国の立場は以前とは逆転した。

イタリアやギリシャなど難民が最初にEUの海岸にたどり着く国々は、新たな難民の受け入れをEU諸国の間で公平なものとするよう長年にわたって要求してきた。これに対し、ドイツなどは難民受け入れの割当制度に反対し、難民が最初にたどり着いた国での受け入れを求める立場だった。

富裕国が難民受け入れに不満示すように

ところが今では、ポーランドに次いで多くのウクライナ難民を受け入れるようになったドイツやヨーロッパ北側の富裕国が、多すぎる難民に不満を漏らすようになっている。

シンクタンク、欧州安定イニシアチブのゲラルト・クナウス代表が言う。「ドイツのバーデン・ビュルテンベルク州よりもフランス全体で受け入れているウクライナ人の数が少ないのはどういうことか。フランス、イタリア、スペインが受け入れているウクライナ人をすべて合わせても、チェコ共和国より少ないのはどういうことか」。

クナウス氏は、難民の流入を一時的に食い止めるためメルケル氏がトルコと締結し、物議を醸した2016年の協定を考案した人物だ。

ドイツ東部ライプツィヒ市のトーマス・ファビアン副市長は、多くの場所が難民施設の維持に抵抗してきたせいで、今になって悪戦苦闘する羽目になっていると話す。

多くの地域が設置に追われている仮設住宅は難民施設よりもはるかに高くつく、としてファビアン氏はこう述べた。ドイツなどの指導者は、戦争と気候変動に見舞われる中、難民がヨーロッパの一部となっている現実を受け入れなくてはならないと考えている——。

「問題は人々がたくさんやってくることなのではない」とファビアン氏は言う。「(受け入れ負担を)分け合う仕組みがないことこそが問題だ」。

(執筆:Erika Solomon記者、Monika Pronczuk記者)
(C)2022 The New York Times

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