共和党の下院奪回が招く米議会の「機能不全」 バイデン大統領「弾劾」の可能性が高まる

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とはいえ、下院での弾劾の後、3分の2の賛成票を必要とする上院での有罪判決は容易ではない。自らの再選目的にウクライナ政府に圧力をかけた疑惑や2021年1月6日議会襲撃事件を通じた実質クーデター未遂の弾劾でも、上院でトランプ氏は無罪判決が下された。二極化社会の今日、反対政党による魔女狩りとして国民を説得し自らの政党で団結を維持すれば、大統領は罷免を逃れることが容易だ。

大統領を罷免できないといった結論は見えていることからも、共和党の真の狙いは2024年大統領選に向けてバイデン大統領そして民主党に対する国民の信頼を蝕むことであろう。

有権者からしっぺ返しをくらうリスク

彼らが気をつけるべきことは、共和党は支持基盤からの圧力で弾劾手続きを開始せざるを得ないとしても、次期選挙で有権者からしっぺ返しをくらうリスクだ。1998年、共和党はビル・クリントン大統領(当時)を弾劾。しかし、その後の中間選挙では、有権者が過度な共和党の行動に反発し、下院で民主党が議席数を増やした。2024年、同じことが起こりうる。

現状、バイデン大統領あるいは政権幹部が憲法上の弾劾要件に該当するものが見つかるかどうかは怪しい。共和党が過度な追及で立法などの本業を怠っていると国民が受け止めれば、2024年大統領選で民主党を手助けすることになるであろう。

渡辺 亮司 米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長

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わたなべ りょうじ / Ryoji Watanabe

慶応義塾大学(総合政策学部)卒業。ハーバード大学ケネディ行政大学院(行政学修士)修了。同大学院卒業時にLucius N. Littauerフェロー賞受賞。松下電器産業(現パナソニック)CIS中近東アフリカ本部、日本貿易振興機構(JETRO)海外調査部、政治リスク調査会社ユーラシア・グループを経て、2013年より米州住友商事会社。2020年より同社ワシントン事務所調査部長。研究・専門分野はアメリカおよび中南米諸国の政治経済情勢、通商政策など。産業動向も調査。著書に『米国通商政策リスクと対米投資・貿易』(共著、文眞堂)。

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