VAIOスマホは、本当に"ガッカリ端末"なのか 日本通信とVAIOの目指す事業モデルとは?

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日本通信の三田聖二社長は「(これまでのSIMフリー端末は)は格安の端末だった。しかし、今回の製品はプレミアムのスマートフォンだ。iPhoneが市場を席巻しているが、グローバルブランドとしてアップルと対抗できるのがVAIOだ。そのVAIOと協業を始め、わずか半年ほどで発表に漕ぎ着けた」と胸を張った。

しかし、発表情報が出回った直後から、発表会場内でもインターネットでも、VAIO Phoneに対しては「ガッカリ」というネガティブ反応が拡散した。発表前から、”SIMフリー機には一流端末がない。VAIO Phoneは一流の端末になる”とアナウンスされ、また高品位のイメージを確立しつつあったVAIOブランドに期待していた”VAIOファン”は「期待したスペックや価格ではなかった」と失望の声を挙げた。

質感やデザインに関してネガティブに評価するべき部分は見つからないが、取り立てて突出している要素もない。ミドルクラスのAndroid端末としては常識的な製品がもう1つ生まれただけ、といえる。スペックに比較すると端末価格の5万1000円が高価な点も、厳しく評価される理由だ。

なぜ5万1000円なのか?

ただし5万1000円には専用SIMカードのパッケージ料金3000円が含まれている。すなわち純粋に電話部分の価格は4万8000円。ミドルクラスのAndroid端末がアジア地区では250ドル以下で売られていることから、この価格が高いと言われているが、コールセンターを用意するなど顧客サポートはしっかり行うようなので、法外とまでは言えない。とはいえ、価格の内訳が発表内容からは見えにくい。発表会場でも、価格は安く設定したとする日本通信側と、価格が高いのではないかと指摘する記者の意見がすれ違う様子が見て取れた。

日本通信の福田尚久副社長(左)と、VAIO・マーケティングセールス/商品企画担当の花里隆志執行役員

発表会後に日本通信の福田尚久副社長と、VAIOでマーケティングセールス/商品企画を担当する花里隆志執行役員にインタビューをする機会があったので、率直に疑問をぶつけた。

まずは価格について。福田氏は次のように説明する。

「3万円台のSIMフリー端末があるが、月額料金やサービスの質も含めてみると、必ずしも安くないものが多い。今回、データ通信使い放題・音声通話サービス付きで1980円、データ1Gバイト+200kbpsならば980円という月額通信料金を実現している。端末の使用期間全体でみた時に安価になるよう設定した。

我々はMVNO(仮想モバイルネットワーク事業者)であり、新規MVNO事業者の支援も行っている。日本のメーカーさんに、自分たち自身でMVNOになり、スマートフォンを開発し、通信サービスの提供で事業を成立させる仕組みを確立して欲しいという思いがある」

すなわち、毎月の通信料金を抑えているため、組み合わせる端末からは、しっかりと端末なりの値付けをしている、というのが日本通信の主張だ。割安か否かは、実際の通信速度にも依存するため、ここでは詳細な評価は避けるが、確かに高いわけではない。

この料金プランはVAIO Phoneとのセットを前提とすることで価格を下げたもので、同じSIMカードを別端末に挿入しても、通信は行うことができない。つまり、VAIO Phone専用の料金プランということだ。2年をひとつのライフタイムサイクルとするならば、VAIO Phoneの4万8000円という本体価格も”高価過ぎる”と切り捨てはできない。日本通信が主張するように、24カ月単位などで比較すると、むしろ安価という側面もあるだろう(ただし価格競争の激しい中にあって、この料金体系が今後もお得であり続けるかどうかはわからない)。

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