ロシアでレクサスが「バカ売れ」するワケ ルーブル安でおカネに困っているはずなのに

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ロシア政府によると、現在のロシアの対外債務残高は6,000億ドル(2014年末時点)である。うち、約9割(5,500億ドル)が民間部門によるものだが、一方で民間部門の対外債権もロシア中銀の外貨準備ともに潤沢であることから、短期的にはデフォルトリスクは高くないとしている。

それでも、西側の風評被害も正直言って無視できないのだが、向こう1年半に返済期限が到来する民間債務額の 1700億ドル。それに対して、短期対外債権は2100億ドルを保有している。一方、ロシア中銀の外貨準備高は3158億ドル(2015年1月末時点)であるから、私の見立てでは、当面のクラッシュはあり得ないとみる。

経済制裁は、結局どうなるのか

さて、ロシア経済にとっての三重苦の中で、もっとも複雑な要素が三つ目の「欧米の経済制裁」だ。いわずもがなだが、経済制裁の背景は一言でいえば、ウクライナ問題だ。

一般的には、ロシアがクリミア半島を力で奪取したことが国際法に違反しているとされている。米国は、ウクライナ東部における戦闘は全面的にロシアに責任があるとしている。さらに、問題をさらに複雑にしたのがマレーシア航空機撃墜事件だ。

欧米諸国は「一方的にウクライナにいる親露派がやった(に違いない)から、ロシアの責任だ」とのプロパガンダを繰り返している。総じて、ウクライナ問題は総じてロシア側が一方的に悪いとしている。

日本での「ウクライナ問題」についての反応というと、何となくムードで「欧米の言っている事が正しいのかな?」と思い込んでいるフシもある。まあ、日本という国家は米国の傘下にいるような感覚から一般の方々から見れば。「対岸の火事だから、そちらで勝手にやって下さい」といったところなのだろう。

ところがどっこい、現地では、ロシア人達が言っていることはまったく違っていた。ロシアの友人たちの意見は「欧米がさらなるNATO拡大を目論んでウクライナ内政の混乱に乗じて介入して、強引に親欧米の傀儡政権を作ったんだ」と言って憚らない。

「そもそも、われわれロシア人にとってのクリミア半島は歴史的にロシアの一部だ。だから、国民投票による民衆の意志を尊重するのは当然」だという。ましてや「マレーシア機撃墜の責任は、ウクライナ政府の指導部とウクライナ軍にあり、裏で操っている米国政府と同国のメディアの問題ではないのか」とも言い放つのだ。

一方、「輸入禁止」については72%のロシア世論が「正当だ」とし、18%の人々が「非生産的だ」としていると聞いた。

ロシア人にとっては、常識では、個人名で欧米から制裁を受け西側の資産を凍結されることは考えられないが、私の友人は「できればオレも欧米の資産を凍結されるくらいの大物になりたいものだ」と冗談を言っていた。ロシア人のアネクドート(笑い話)は状況が悪化すればするほど、輝きを増すから、いかにもロシア的である。

次回は、今回参加したロシア鉱山セミナー(MINNEX FORUM)での原油価格の下落の影響と鉱物資源の動向についてお伝えしたいと思う。

中村 繁夫 アドバンストマテリアルジャパン社長

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なかむら しげお / Shigeo Nakamura

レアメタル(希少金属)の専門商社「アドバンスト・マテリアル・ジャパン代表取締役社長。中堅商社・蝶理(現東レグループ)でレアメタルの輸入買い付けを30年間担当。2004年に日本初のレアメタル専門商社を設立。著書に『レアメタルハンター・中村繁夫のあなたの仕事を成功に導く「山師の兵法AtoZ」』(ウェッジ)、『レアメタル・パニック』(光文社ペーパーバックス)、『レアメタル超入門』(幻冬舎新書)などがある。

 

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