収束せぬウクライナ「停戦」実現するただ1つの方法 「ロシアを打ち負かせ」の視点では情勢を見誤る

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――この先、ウクライナ戦争はどう展開していくと見通していますか? どんな終わり方が想定できますか。

ウクライナがクリミアを含む全領土からロシアを追い出すまで戦うと主張する以上、プーチンがこれに応じる可能性はありません。希望的観測を伴って一部で語られているような、プーチン政権の崩壊なども起こらないでしょう。

したがって、ウクライナはアメリカの代理としてロシアと戦争を続け、双方に果てしない人的被害が発生し続けるでしょう。命を軽視した戦いが無期限に続くことになります。

途中で話したように、目下のウクライナ戦争の停戦は「ロシアもウクライナもどちらも負けてはいない」という形にするしか方法はないと思います。これは戦場における結果の反映でもありますが、同時にそういう「出口戦略」を関係者全員が知恵を絞ることによって生まれるものでもあります。そういう方向性でしかウクライナ戦争は終わらないでしょう。

対ロ制裁に追随するだけが対応策ではない

――日本政府や日本の国民ができること、すべきことはあるでしょうか。

命を重視する戦略にウクライナとロシアの双方が転換し、関係者がこの戦争の出口戦略に向かって共通の知恵を絞るように、関係者すべてに働きかけることです。とくに、バイデン大統領とゼレンスキー大統領に、です。やる気になれば、日本外交はそういう対応を取ることができるはずです。対ロ制裁に追随することだけが対応策ではありません。

もう十分過ぎるほど犠牲は払われました。ロシアの侵攻が免責されることはありませんが、とにかく今は、これ以上の犠牲者を出さないよう、日本は最善の努力をすべきだと考えます。

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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