太陽電池製造装置ベンチャーのエヌ・ピー・シー、全員一致経営で先手打つ下町企業の実力

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役員全員一致の原則 徹底してリスクを排除

製品価格を下げても十分な利益を確保できるように、原価低減を徹底している。調達コストを下げる狙いで、これまではその都度発注していたモーターなどの部品を、見込み発注による大量購買に変えた。外注していた部品ユニットの内製化を促進し、同時に標準化も進める。製品設計も全面的に見直す。「外注している塗装工程も、いずれは内製化したい」と、矢内利幸取締役は話す。

作業効率化の結果、納期も従来に比べて2カ月以上短縮された。今では単体装置が2カ月、複合装置(二つ以上の機械を組み合わせた装置)が3カ月で納入できるようになった。

同社は今11年度の営業利益率を9・3%へ改善させる計画だ。「原価低減の効果は、今年度後半から本格的に発現してくるだろう」と、いちよし経済研究所の大澤充周シニアアナリストは分析する。今後は増産や社員増員など、規模を急拡大しながら利益率を向上させることができるかが、重要なポイントになる。

市場変化に先手で仕掛けてきた隣社長だが、ベンチャー経営者にありがちな、リスクを冒して果敢に攻めるタイプではない。むしろ慎重でゆっくりした経営を心掛ける。

一例が、創業時から掲げる「役員全員一致の原則」だ。6人の取締役全員が賛成しなければ、重要な施策を進めない。隣社長は経営破綻した商社、イトマンの出身。過大な不動産投資に走るなど、経営トップが暴走した会社の末路を経験した。「経営にはスピードが必要だが、それ以上に社内のコンセンサスが重要」。創業4年目に就任した佐藤寿取締役も「時間はかかるが、全員一致の方針でやってきてよかった」と語る。

独自の経営哲学を持つエヌ・ピー・シーは、新興国の台頭をかわし成長を遂げることができるのか。真価が問われるのはこれからだ。

◆エヌ・ピー・シーの業績予想、会社概要はこちら

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(梅咲恵司 =週刊東洋経済2011年3月19日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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