大塚家具の対立、見逃された「3つの視点」 決算書で読み解く父娘それぞれの経営哲学

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しかし、いざ、親の会社に入ってみると、外からは知ることのできなかった親の苦悩と会社の経営課題に直面します。そのうえ、ほかの従業員と違って、短期間に取締役に昇進したりするものですから、周囲からは「ズルをしている」と見られることもあるのです。

日本中には、そういう会社がゴマンとあります。大塚家具の出来事においても、そのような日本の企業社会の縮図を見る思いです。

高級路線か、変革か?人員削減とその後

2009年のリーマンショックの後、大塚家具は、久美子社長の指揮の下に、事業の再構築に取り組むことになります。そして、従業員数が減少しました(1784人が2年後には1678人となる)。

その結果、大塚家具は赤字経営を克服することに成功しました。しかし、その再建は万全ではありませんでした。

これに関して、筆者が注目したのは、次の2点でした。

まず1点目は、久美子氏が対策に乗り出した結果、赤字の克服はできたものの、かつてのような数十億円もの当期純利益を獲得するには至らなかったことです。黒字と言っても、ほんの数億円程度の黒字にとどまったのです。

2点目は、下記の表に示すように、従業員1人当たりの売上高が下がってしまい、これが止まらないことでした。

これは、経営者にとって深刻な問題です。大塚家具では、リーマンショックの緊急対策はうまくいったものの、抜本的な対策をとらないと、いつか会社が沈没しかねないという状況に陥っていたのです。

ここから先も、筆者の推測が入ることをお許しください。

久美子社長は次のように考えたはずです。

「従業員1人当たりの売上高の下落が止まらないということは、個々の従業員の頑張りが足りないのではなく、自分たちの売り方が時代にそぐわなくなってきたのではないか。現に、自社以外の大手の家具屋さんは、ニトリやIKEAのように業績を伸ばしている」

「また、島忠もニトリよりは地味な会社だが、売り上げにも利益にも増加傾向がみられる。大手の家具屋では、ウチだけが低迷している」

「なぜウチだけが低迷するのだろう。製品は?→決して悪くない。従業員の能力は?→決して見劣りしない。では、売り方がどうか?→これは他社とずいぶん違うようだ」

その帰結として、販売方法に抜本的な対策を講じないと会社が沈没してしまうと、久美子氏が考えた可能性がきわめて大きいのです。

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