「カニエ・ウェスト問題」アディダスが被る損害 人種差別言動繰り返すウェストと契約解除

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アディダスは10月6日、イェのパートナー企業の中でいち早く、関係を「検討中」と公言したが、同社が正式な関係断絶に向けて迅速に動かなかったことがあだとなり始めた。ADLは、「これ以上何を見直す必要があるのか?」と問いかけた。

アディダス側はおそらく、事態を好転させるような公的な謝罪があることを期待していたのだろう。ほぼ「非公式」であるイェのほかのファッション事業における関係とは異なり、アディダスがYeezyと契約を解除することは、大きな契約上、および長期的な意味を持つ。

2つのブランドは、公的にだけではなく、財政的、物流的にも関係が深いからだ。アディダスにとって、イェとのパートナーシップは、昨年の利益20億ドル以上のうち10%以上の価値があったのである。

アディダスへの圧力を強めた団体

だが、ヘイト団体のメンバーがロサンゼルスの高速道路に「Kanye is right about the Jews(カニエのユダヤ人批判は正しい)」と書かれた横断幕を掲げたことを受け、ADLは今週、アディダスへの圧力を強めたのだ。

ドイツでは、ユダヤ人中央評議会が、アディダスに対してイェとの関係を断つよう求めた。「アディダスの歴史的責任は、ドイツがルーツであるだけでなく、ナチス政権との絡みにもある」と、評議会の代表であるヨーゼフ・シュスターは述べた。「このような企業には、反ユダヤ主義に関して厳格な立場をとることを期待するだけだ」。

アディダスの創業者アディ・ダスラーはナチ党に属しており、同氏の工場は戦争末期に軍需品の生産を余儀なくされた。第2次世界大戦終了後、同氏が現在の会社を設立することが許されたのは、ユダヤ人の友人の宣誓証言のおかげだった。

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