欧州が警戒「中国鉄道メーカー」信頼回復なるか 根強い不信感、市場参入へ巻き返しの策は?

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なぜ、中国に対してだけ執拗と思えるほど警戒するのか。会場には、話している言葉から推察して多くの中国人と思しき来場者を見かけたが、実際のところその行動には驚かされる。とにかく、展示車両の上から下まで、あらゆる場所を覗き込んでは写真を撮っており、とくに唖然とさせられるのは、車体床下へ匍匐前進のように潜り込んで機器類の撮影をしていることだ。

なりふり構わぬ姿で撮影する様子を会場のあちらこちらで見かけたが、まるで産業スパイのようで、見ているこちらも決していい気分にはならない。いわば、ビジネスの場における最低限のモラルが欠落しているという点が警戒感を拭えない理由の1つであることは間違いなく、たとえそれがCRRCとは関係ないことだったとしても、同じ中国ということでひとくくりにされている点は否定できない。

CRRCブース
イノトランス会場のCRRCブース。欧州人よりアジア人の姿が目立った(撮影:橋爪智之)

欧州メーカー買収失敗の理由にも

ヨーロッパの鉄道産業は、難解な信号システムやインフラに対する理解、地元欧州系メーカーでも苦戦する認可取得など高度かつ極めて複雑怪奇で、ある程度の経験が必要不可欠となる。ゼロからノウハウを取得することは困難に近く、だからこそ欧州以外のメーカーがヨーロッパへ進出するためには、欧州系企業を買収することが絶対条件と言える。

CRRCはこれまで、何度か現地メーカーの買収を試みたことがあったが、その多くは今のところ失敗に終わっている。有名なところでは、日立製作所がイタリア重工業大手のフィンメカニカから買収した旧アンサルドブレダだ。買収にはボンバルディアなど複数の会社が名乗りを上げた。その中にはCRRCの名前もあったが、最終的には日立製作所が勝ち取った。

日立は、さぞや他を圧倒する金額を提示したのではないかと想像するかもしれないが、実はCRRCが日立をはるかに上回る金額を提示していたと言われている。それでも日立へ売却することを決めた理由は、中国や中国企業に対する根強い不信感があり、中国の手に渡すくらいなら多少金額が低くても他国の企業へ託す、という点があったとされる。

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