女子中高生が熱狂する「ミックスチャンネル」 10秒動画アプリで自己表現する時代

拡大
縮小

ミックスチャンネルにはいくつか目立つ特徴がある。

一つは「リンク機能」で、自分が投稿する動画に、ほかの動画をひも付けられるというもの。自分が誰かの動画をリメイクしたり、アフレコ(音声追加)でシリーズものを作ったりもできる。

ユーザーが自分の動画に影響を受け、まねをしたことが通知で届くため、自分が受け入れられたと実感できるわけだ。そうした体験をきっかけに、もっと多くの反応を得たい心理につながる。実際、動画編集ソフトを駆使し、ミニ映画のように凝った動画も増えている。

もう一つはツイッターのようにフォローできる「ファン機能」。そのユーザーのファンになると、新規動画やファン限定動画などの通知が届く。人気カテゴリーではファン機能が顕著になり、カップルの記念日動画や、二人で「何かやってみた」系の動画が人気を呼ぶ。アプリを始めて1週間で1万人のファンがついたカップルもいる。

競合には6秒動画のVine

勢いを感じるミックスチャンネル。だが世には、「ユーチューブ」「ニコニコ動画」がすでにあるほか、最近は6秒動画の「Vine(バイン)」やライブ配信の「TwitCasting(ツイキャス)」など、動画配信サービスがいくつも存在する。

短時間の動画アプリという点では、ミックスチャンネルはVineと同じポジションにある。ただ、Vineが主にカメラ撮影で動画を作るのに対し、ミックスチャンネルはスマホに保存された過去の動画を組み合わせ、作品を作るシンプルな設計だ。画像を用いたパラパラ漫画のようなスライドショーや、美肌加工、飾り付けで「デコる」ことなども比較的易しい。

ライバルについて福山氏は「暇潰しのためのライトなエンターテインメント消費を生み出すサービスはすべてが競合」とし、「ウチにしかないコンテンツ、ここにしかない流行が存在するのが重要で、それをいかにユーザーとともに作っていくか」と分析する。

運営するドーナツの業績は快調だ。11年1月期に7000万円だった売上高は、14年1月期に39億円まで伸長。これはモバイルゲームが稼いでいるためで、ミックスチャンネル自体の利用は無料である。今後は企業とのキャンペーンで協賛金を募るほか、4月からは動画広告の提供へと乗り出す。未成年の利用者が多いため、トラブル防止にも注力していく。

新たな自己表現の文化を生み出したミックスチャンネル。10代の「認められたい」という欲求をがっちりとらえてはいる。エンターテインメントとして成立しているのは確かで、あとはどこまでマネタイズ(収益化)できるかだ。それが実現できたとき、単なるブームで終わることなく、名実共に誰からも認知される存在になる。

「週刊東洋経済」2015年3月14日号<9日発売>「核心リポート01」を転載)

佐藤 慶一 エディター
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT