中国がスーダンの武器産業を支援する理由 急激に勃興する武器輸出大国の秘密とは?

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IDEX2015でのスーダンパビリオンの全景

ここに、中国の戦略が透けて見える。つまり、中国にとってスーダンは自国の武器輸出の中継点なのだ。ジンバブエやシリア、イランなどの問題国家、あるいはハマスのような武装勢力などに武器を売却する場合、中国から直接行うと国際社会から非難を浴びる。だが、スーダンなどを経由して行えば「善意の第三者」を装えるわけだ。パキスタンの例もあるが、中国はイランにも技術を供与しており、これらの国々から独裁国家や紛争地域に武器を輸出するネットワークを作っているものと考えられる。

中国はスーダンを整備拠点にも活用

スーダン初のRWS(リモート・ウエポン・ステーション)「ATEED」。兵装は自社製の12.7mm機銃「ドシュカ」、または7.62mm機銃「グリノフ」が選択可能で、昼間ビデオカメラ、サーマルイメージャー、レーザー測距装置が統合されており、昼夜を問わない交戦能力を持つ。搭載される機銃の仰俯角は-30~+50度、電源は24V40Aとなっている。コンポーネントの多くは中国製、CCDカメラはおそらくソニー製だろう。

また中国はスーダンを整備などアフター・セールス・サービスの拠点として利用している。現在スーダンの戦車整備工場は旧ソ連製の旧式戦車や中国製戦車のオーバーホールが可能となっている。これはアフリカや中東の中国兵器、あるいは旧ソ連製兵器を使用している軍隊にとっては極めて便利だ。これがアフリカそして中東市場での中国製兵器、そしてスーダンで生産されている兵器の輸出の大きな力となっている。

もう一つのメリットはコスト削減だ。中国では人件費が大幅に上がっており、我が国の中国に進出したメーカーも続々と生産拠点を国内、あるいはより人件費の低いベトナムなどに移しているが、中国メーカーにしても人件費のより安いスーダンで生産し、整備した方がより安い価格で地域の顧客に製品を提供できる。これまた中国にとっては大きなメリットだ。

スーダン製兵器は今後アフリカ、中東の紛争で大量に使用される可能性が高い。安倍政権は積極的平和主義を掲げており、今後自衛隊のPKOなどアフリカ、中東での活動も増えるだろう。その際スーダン製兵器と対峙する可能性は極めて高い。我が国はスーダン製兵器の現状と、彼らの能力をリサーチする必要がある。またスーダンが武装組織、紛争国などに武器輸出をしていないか国際社会とともに監視する体制を構築すべきだ。

清谷 信一 軍事ジャーナリスト

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きよたに しんいち / Shinichi Kiyotani

1962年生まれ、東海大学工学部卒。ジャーナリスト、作家。2003年から2008年まで英国の軍事専門誌『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』日本特派員を務める。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関Kanwa Information Center上級アドバイザー、日本ペンクラブ会員。東京防衛航空宇宙時評(Tokyo Defence & Aerospace Review)発行人。『防衛破綻ー「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『専守防衛-日本を支配する幻想』(以上、単著)、『軍事を知らずして平和を語るな』(石破茂氏との共著)など、著書多数。

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