泉・明石市長の「暴言」は一体何がマズかったのか 同じく職員とやりあった橋下徹・元大阪市長との違い

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泉市長も、自らの怒りを抑えるために、本を読んだり、怒りのノートをつけたり、腹立たしいことがあるとトイレに立ち上がる、6秒数えるなどを実践していたという。彼からぶつけられた激しい怒りや暴言で、職員は何も言えなくなるうえに、精神的にも抑圧されてしまう。

これは明らかなハラスメントである。それを理解して穏やかになったかと思っていたら……。アンガーマネジメントの努力も虚しく、今回また突然「糸が切れたように完全にキレてしまった」らしい。泉市長は、どうも自らの感情をコントロールするのが、かなり苦手のようだ。

泉市長をキレさせたものは何か

泉市長は、明石の漁師の家庭で育ち、自らも漁師言葉の悪さを解説したことがあるなど、言葉使いの悪さは自認している。しかし泉市長自身は、東京大学を卒業し、その後NHKやテレビ朝日などのメディア業界から、衆議院議員などを経て明石市長になったエリートである。理論家であり、教養も深く、行政手腕も高い評価がある。今年開設したツイッターも頻繁に書き込んでいたが、気取らない気さくなキャラでフォロワーも着実に増加していた。

一方で2月12日、自らのツイッターに川崎重工業の法人市民税額を投稿。その10日後に投稿は削除されたが、3月4日の明石市議会で「権力を行使して把握した情報を人質にしている」と糾弾された。

また、9月28日の毎日放送で、今年3月に辞職した宮脇俊夫前副市長、並びに現職の明石市職員のインタビューが報じられた。職員を「お前ら不動産会社から金もうてんのか」と侮辱したことなどを、宮脇前副市長から証言された。

さらには、辞職した副市長2人は、職員への暴言や威圧的な態度を改めるよう、辞表を持って泉市長に直談判したが、相手にされなかったという。このことから、職員に対する考え方の違いに耐えられなくなったことが辞任の原因であると訴えた。本来なら強い信頼関係で市長を補佐する副市長との関係もこのような状況だったことから、泉市長は庁内でも孤立していたと言えるだろう。

司法修習同期だった橋下元大阪市長との「怒り」の違い

今回、泉市長の一連の様子を見ていて、私は橋下徹・元大阪市長(2011~2015年)を思い出した。私事となるが、私が民間企業から大阪市役所の部局の広報責任者へと転じた頃である。実は泉明石市長と橋下氏は、司法修習生時代の同期である。

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