Netflix「広告付き新プラン」が破壊的で怖すぎる訳 月額790円の「羊の皮をかぶった狼」がやってきた

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Netflixの発表の中に興味深い言葉があります。

「マイクロソフトのようなパートナーは、Netflixの広告をサポートするためにのみ、この情報を使用することができます」

という言葉です。これをストレートに読み解けば、当初はターゲット広告はやらないけれど、いずれMSNで検索した履歴情報をマイクロソフトがNetflixの広告のために使うことを検討すると公言しているわけです。

これが実現した未来では非常に興味深いことが起きます。マイクロソフト・Netflix連合はスマホやPCの履歴をもとにビッグデータ分析を加えて、スマホ、PC、Netflixに検索連動型広告を出せるようになります。

二段ロケットはとてつもない破壊力を持つ

そして今はテレビの広告とネットの広告は別の市場なのですが、いずれこの市場が連動したら単純計算で4兆5000億円の巨大な広告市場が出現することになるのですが、他のメディアがその可能性に気づいたときには、すでにNetflixは全世界で広告市場を発展的に破壊して再編成する能力を手にしているかもしれません。Netflixの戦略の二段ロケットはとてつもない破壊力を持つウェポンなのかもしれないのです。

これは「Netflixが広告付きで安くなる」というのがこのニュースの本質ではなくて「Netflixは羊の皮をかぶった狼なのかもしれないですよ」という話です。少なくともテレビのニュースはもっと危機感を持ってこの話を報道したほうがいいと私は思います。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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