ロシア併合で激化する「市民への攻撃」悲痛な現場 日本人写真家がとらえたザポリージャの今

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犠牲になった人が、順に黒い袋に入れられていた。9月30日、ウクライナ・ザポリージャ市(写真:筆者撮影)

着弾地点は筆者のアパートから11キロのところにある自動車用品市場の駐車場だった。そこにはロシア軍の占領地に残る人を迎えに行ったり、支援物資を届けたりするための車60台ほどが集まっていた。ザポリージャ市内に数カ所設けられた公的な中継地点の一つだったからだ。

ロシア軍の占領地との境は、その駐車場から28キロほど南のところだ。中には、そこからさらに200キロ以上離れたマリウポリを目指す人もいた。ロシアへの併合が決まれば、占領地の外に戻って来られる保証はない。プーチン大統領の演説開始まで8時間を切り、そこにいる誰もが焦っていた。

駐車場へ放たれたミサイル4発

そんなタイミングを狙って、ミサイル4発が放たれた。二列縦隊で並んでいた車列の右手10数メートルほどのところに、直径6メートル深さ3メートルほどの穴があいていた。ここで炸裂したS-300ミサイルの着地点だ。ウクライナ兵はミサイルの破片に刻まれた個体番号を指差し、確かにロシアが放ったものだと説明した。

現場にはボランティアの仲間、セルゲイ夫妻もいた。マリウポリに近い村から知人を連れて帰る予定だったという。

「突然大きな音がして、気がつくと周りに死体が転がっていました。私は左の耳が聞こえなくなりました。着弾地から20メートルのところでしたから、死んでいても不思議ではなかったです」

死者は30人、負傷者は88人で全員が民間人。11歳の女の子と14歳の男の子も犠牲になった。ウクライナの検察当局は民間人を狙った攻撃で、この数週間のうち最大数の犠牲者が出た、と発表した。

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