安倍氏追悼演説「野田元首相」決定までの複雑怪奇 「常識的な落としどころ」の裏に政治的駆け引き

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だからこそ、「国葬実施も踏まえての臨時国会の追悼演説の適任者は野田氏以外にありえない」(自民長老)というのが与野党の共通認識になった。当の野田氏も「それを十二分に意識して行動してきた」(側近)との見方が多い。

その一方で、安倍氏の国葬実施後も政権危機が深刻化し続ける岸田首相からも「野党第1党の実力者でもある野田氏に追悼演説を要請することで、自民党の謙虚な姿勢をアピールできる」(周辺)との期待がにじむ。

菅前首相の「涙の弔辞」を意識?

「9・27国葬」で大きな話題となったのは菅前首相の「涙の弔辞」。もちろん、野田氏もそれを意識し、「歴史に残る名追悼演説を目指して、懸命に文言を推敲している」(側近)とされる。

今回の「野田追悼演説」が国民的な喝采を集めれば、旧統一教会問題一色となっている臨時国会の与野党攻防の構図を変える分岐点となる可能性もある。それだけに「演説の当日は、自民や立憲民主両党幹部だけでなく、出席議員全員がそれぞれの思惑を秘めて興味津々で見守ることになる」(閣僚経験者)のは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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