3年ぶりリアル開催「CEATEC」知られざる裏の役割 「デジタル人材」の育成・獲得にあの手この手

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実際、この提案を反映した取り組みもある。シャープでは、「SDGs、カーボンニュートラルへの貢献に配慮した取り組みとして、ブースに使用する木材・素材の最小化に加え、リユース素材やリサイクル素材を中心に製作することで、展示会終了後の廃棄物の最小化を図る。ニューノーマル時代における新たな展示会のあり方として提案したい」と語る。

具体的には、展示台は100%再生紙による硬質ダンボールを使用し、閉会後もリユースできるようにしたほか、外装や壁面にもは木工を使用せずに廃棄物を低減するという。従来のままでブースを設営した場合と比べて、木工低減率は79.2%になるという。

実は、2022年9月にドイツで開催されたIFA 2022において、パナソニックが環境に配慮したブースづくりを行い、関係者の間で話題を集めた。パナソニックによると、新しいブースのデザインにより、3年前となる2019年にIFAがリアル開催された際のパナソニックブースと比較して、140トンのCO2排出量を削減。これは、71%の削減に相当するという。

パナソニックは、CEATEC 2022には出展しないため、日本ではこの取り組みを見ることができないのは残念だが、今回のCEATEC 2022をきっかけに、サステナブルを強く意識した展示ブースづくりという、新たな潮流が始まるかもしれない。

CEATECを支えてきた電機大手企業にとって、サステナブルへの取り組みは避けては通れないものだ。その「使命感」が、今回のブースづくりにつながっている。

なお、CEATEC 2022では、無料配布されていた紙の会場案内図(会場マップ)が初めて廃止される。その代わりに、スマホやタブレット、PCで見ることができるデジタルマップが用意されている。これも紙の削減につながり、サステナブリティへの取り組みのひとつとなる。現地で紙のマップを入手し、見学先に丸印をつけて会場を回っていた来場者は、今年は紙のマップがないので注意が必要だ。

「デジタル人材の不足」という危機感

もう1つの「危機感」の背景にあるのは、日本におけるデジタル人材の不足である。今回のCEATEC 2022では、学生が自由に利用できるラウンジや、学生の会場見学をサポートするコンシェルジュデスクを設置するほか、数多くの学生向けのセッションを用意している。

元来、CEATECには、理系の学生を中心に、高校生や専門学校生、高専生、大学生が数多く来場しており、会場が近い首都圏では学校単位での見学申し込みも少なくない。2019年には会期中に3000人以上の学生が来場しており、総合展示会としては珍しいほどの動員力を誇る。

だが、その一方で、経済産業省の試算では、2030年には最大で79万人のデジタル人材が不足すると見られていたり、先ごろ発表された世界デジタル競争力ランキングでは日本は29位へとさらに順位を落とし、その理由としてデジタル人材不足が指摘されたりしている。

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