不動産流通

KEY WORD「住宅ストック活用」
空き家問題を防ぐ中古住宅市場

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人口減少、高齢化、震災復興など、さまざまな課題に直面する日本をどう成長に導いていくのか。アベノミクスをはじめ多くの施策が展開される中で、ビジネスの現場でも、課題解決につながる取り組みが次々と生まれている。ここでは新しい時代を予感させるキーワードを挙げながら、いま、そしてこれからを読み解く。

KEY WORD 「住宅ストック活用」
住宅ストックとは、国内に建築されている既存の住宅のこと。5年ごとに実施される国の住宅・土地統計調査によると、2013年の総住宅数は6063万戸で世帯数5307万を大きく上回る“過剰在庫”状態で、空き家問題なども顕在化していることから、その活用策が議論されている。

世帯数の伸びが鈍化しているにもかかわらず、近年の新設住宅着工戸数は年間90~100万戸前後で推移。このため、住宅ストック数(総住宅数)は、1998年の5025万戸から、2013年までの15年間で約1000万戸増と、膨張の一途をたどっている。

新設住宅着工は、経済波及効果が大きいとされ、従来は、景気下支えのために、その促進が図られてきたが、住宅ストックと世帯数の乖離が進んだことで、空き家が増加。敷地の樹木が生い茂ったり、老朽化した建物が、近隣に迷惑や危険を及ぼしたり、不審者が入り込んで治安を悪化させるなど、社会問題化しつつある。13年の空き家数は、98年比約250万戸増の820万戸で、空き家率は同2ポイント増の13.5%になった。現在は7~8戸に1戸の空き家率だが、人口・世帯数減に伴い、2040年には4割前後に達する可能性も指摘されている。

住宅ストック活用には、健全な中古住宅市場が必要だ。日本では、建物の価値が20~25年でゼロになるように一律に低減する計算が慣行になっており、中古住宅の価値を、それぞれの状態に応じて適正に評価する仕組みが不十分だった。そのため、現状では再生可能であっても、築年数が経過した中古住宅の売買は難しい。高齢者が自宅を担保に老後の生活資金を借り入れるリバースモーゲージの普及も阻害されている。

国は中古住宅市場活性化に向けた専門家会議で、中古住宅融資の際の建物の担保評価について、慣行による机上の計算ではなく、現場で建物を実際に検査するなどの評価方法の見直しを議論。米国で完備されている中古住宅のデータベース構築に着手した。

住宅の劣化状況や欠陥を目視でチェックする住宅診断のプロとして、ホームインスペクター(住宅診断士)の民間資格試験も2009年からスタート。中古住宅市場の健全な発展に必要なインフラとして、人材の育成が急務となる中で業界をあげた取り組みも広がっている。