【産業天気図・パルプ/紙】総じて底堅いが懸念材料は輸入紙と原燃料高。家庭紙も焦点

2005年度の製紙業界の空模様は、総じて『曇り』と見られる。
 日本製紙連合会の「05年 紙・板紙内需見通し」は紙、板紙ともに3年連続の増加を見込み、紙・板紙計ベースで前年比0.4%増の3198万トンと推計している。04年が全般の景気回復や猛暑・アテネ五輪などで盛り上がり、前年比1.6%増(以下、04年実績は1月時点の見込み値)と強めの数字だったことを勘案すれば、それを上回るとの予測は強気の部類と言えようか。
 ただ、実質GDP成長率の前提として政府見通しの1.6%増を採用した割には抑制的な数字と言えなくもない。実際、04年の期初見通し0.7%増が結局1.6%増で着地したように、連合会が毎年出す予測数字は、概して抑え気味傾向と言われている。今年の0.4%増予測も、ニュアンス的には若干の上積み含みのようだ。
 紙・板紙別に見ると、内需の6割を占める紙は0.5%増。04年の2.1%増に比べて減速するものの、最大ボリュームの塗工印刷用紙が1.7%増(04年3.8%増)と紙全体を引き続き牽引する。愛知万博などが広告を後押しするという。
 板紙は0.3%増の見通し。やはり04年の0.8%増に比べるとペースダウンだが、4分の3を占める段ボール原紙を主軸に、なお足取りは堅調という。最大分野の加工食品向けが続伸するとともに、04年に天災続きで振るわなかった青果物向けが盛り返すとのシナリオだ。
 もっとも、この内需を国内出荷と輸入に分解すると、プラス要因ばかりではないことがわかる。04年実績を見ると、情報用紙(コピー用紙等)の輸入量は前年比30.5%増と大きく伸長。これは割安なインドネシアや中国産品の拡大のためで、今年も数量、市況両面で国内勢には懸念材料だ。
 特に中国では大型の洋紙生産設備が今年相次いで稼働する計画で「中国国内で吸収しきれない余剰分が日本に振り向けられる」との指摘が証券アナリスト等からも少なくない。今年の空模様を『曇り』にせざるをえない理由の1つだ。反面、「大型マシンが稼働直後からフル生産になることはありえず、市況は意外に崩れないのでは」(商社筋)との声も聞かれる。

◆2強は引き続き合理化効果で大幅増益
 
 業界支配力の強い2強、王子製紙と日本製紙グループ本社の動向を見ると、ともに連合会予測の通り、洋紙・板紙は堅調か。主要洋紙では前期後半の値上げ効果も通期化する。リストラ等の合理化効果も引き続き発現し、連続増益を確保しよう。毎期150億~200億円前後の合理化効果を出し続けている両社は、その規模と同様、収益体質面でも業界内では特異な存在だ。ただ、04年苦しんだ原燃料高には今年も悩まされそうで、両社が掲げる経常利益1000億円目標は達成微妙だ。
 2強の明暗を分けそうなのが、家庭紙事業の行方。日本製紙が価格重視の減産・合理化推進指向なのと対照的に、王子製紙は「フル生産・フル販売」を旗印に、中小のふるい落としを本格化させている。日本製紙などは値上げしたい意向だが、王子側は「来期は、もっと増産効果が出る」(経営幹部)とフル生産を続ける模様で、その結末がどうなるかは現状、予断を許さない。
 準大手・中堅クラスについては、再編の可能性が今年の焦点か。1月末に発表された三菱製紙と中越パルプ工業の合併を契機に、さらなる準大手・中堅勢の合従連衡を予想する向きもある。また「特定の品種では独禁法に抵触せず、2強が中堅勢のM&Aに踏み切る場合もあろう」(業界アナリスト)などの観測も無視できない。中堅勢の中には、特定分野に経営資源を集中して2ケタ近い利益率を誇っている社もあり、確かに魅力的な投資案件ではある。
 もともと製紙業界は、国内生産量(紙・板紙計)が近年3000万トン前後で頭打ちのうえ、前述の通り、安い輸入紙が存在感を高めている。その一方では中国が原燃料を飲み込み、価格高騰が収益を圧迫。そうした厳しい環境下で、限られた内需のパイを奪い合う「国内産業」にとどまっている準大手以下の危機感は強い。「彼らの統合再編は、いつ起きても不思議ではない」(製紙中堅幹部)と言えよう。
 付言すれば、メーカー再編の先行に追いつけず、複数の商流が旧態依然のまま残っている流通面の改善も急務。再編メーカーの同一製品を卸商同士でたたき売りし合っているのは他業種から見れば異様だろう。ただ「流通各社は一国一城の主で、整理は一筋縄にはいかない」(卸商大手)のが実情。商流整理が今年、どこまで進展するかは心許ないところだ。
【内田史信記者】


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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