日本の武器輸出戦略には致命的な弱点がある 国際見本市で中小企業を積極支援するべき

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武器輸出を促進したいのであれば、民間技術転用を含めた素材や部品、コンポーネントなどの中間財の方が、よほど可能性が高い。特に中小企業の応援をするべきだ。

大手では帝人が装甲や防弾チョッキなどの材料となるアラミド繊維、「トワロン」を世界で販売しており、これはデュポン社の「ケブラー」に次いで世界2位のシェアを占めている。だが多くの大企業は、国内の世間体を気にして世界の軍事市場で販売をためらったり、販売の事実を隠したがったりする。

例えばYKKは世界の軍隊の戦闘服やバックパックなどにジッパーを供給しており、YKKのジッパーを使うことは装備品メーカーにとってプレステージである。またドイツの子会社はドイツ軍の特殊部隊と共同で特殊なジッパーを開発しているが、そのような事実を、日本の本社は積極的には広報していない。装甲車を生産しているコマツにしても機銃を生産している住友重機にしても、ホームページに武器を製造していることを全く載せていない。

納期に正確な点も高い評価に

それに対して、中小企業は社長が決断すれば、外国の武器市場に乗り出す覚悟があるとろが少なくない。素材や部品、コンポーネントなどであれば戦車や航空機などの完成品と違い、実戦での複雑なノウハウなどはあまり必要なく、プライム・メーカーから指定された仕様、あるいはそれ以上の性能や耐久性などを確保すれば良い。しかも日本企業は納期に正確であり、これは大きな武器となる。

IDEX2015における韓国のナショナル・パビリオン

諸外国では自国の兵器産業の振興のために、国際的な軍事見本市にナショナル・パビリオンを出展し、中小零細企業の輸出を手助けしている。その際には出展費用や渡航費や滞在費、出展物の輸送費などに対する経済的な補助や通訳やアドバイザーの派遣、パビリオン内に商談スペースを提供したりする。

フランス陸軍ブースで来場者に説明する外国人部隊の日本人隊員。今回のIDEXには日本人が2人参加していた

これらは普通に行なわれている。さらには自国の軍隊がブースを出展し、そこでデモンストレーションなどを行う国もある。

またパビリオンに政府機関や国防省関連機関などが出展することもよく行なわれている。例えば英国はUKTI(英国貿易投資省)などが出展し、ロシアではあれば武器の輸出入を一元管理するロスボロンエキスポートなどが出展している。

ナショナル・パビリオンを出展することは国家としてプレゼンスを誇示することであり、要は「目立つ」ことが集客にもつながる。それは国家の信用を中小企業に付加することにもなる。

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